楽しみにしてました、Animal Collectiveの6年ぶりの新作『Time Skiffs』。
今作は癒しのアルバムですね。やさしくて美しい。
パンデミックがあったからそれになぞらえてしまうけど、それ以外にも、欧米のゴリゴリ資本主義格差社会、それらが生み出す人心の疲弊感や世界の先行きの不穏さ、そういったもの全てへの癒しのイメージかな。
全体的に、大人しくて上品、そして風通しの良い音空間が気持ちよくて何回も聴きたくなるアルバムです。反面、やや薄味でポップさが控えめなのがレビューサイトでの採点の伸びが悪い理由でしょうか。
間延びせず聴き飽きないうちに終わるちょうどいい9曲、私はけっこう満足です。
アルバムのリードシングルになっている「Prester John」は、名作『Merriweather Post Pavilion』チックな、シンセとハーモニーのキラキラしたネオサイケサウンド。
彼らもオッサンになったので、青さの代わりに哀愁が漂うメロディになってます。季節で例えると初夏から秋に変わった、というか。
予言めいた不思議な歌詞も、さあ好きに想像してごらんなさい、という感じが非常に好きですね。
スペーシーなイントロから始まる「Strung With Everything」。
近作『Centipede Hz』や『Painting With』では、音がギッシリ詰め込まれている酩酊感と、刺激的な電子音が飛び交う覚醒感が魅力的でしたが、今作ではこの曲ように、音の1つ1つが残響音を感じられる程度に隙間が開けられていて、陶酔感やチル感が強調されています。
彼ら特有の早口ソングも今回はわりとおとなしめ。最後は子守歌みたいにゆっくりに。
この曲もそうですが、今作はワンフレーズのリフレインが多く、曲展開のメリハリやメロディのキャッチーさが減っているのも特徴ですね。薄味になっている印象は否めませんが、そのおかげで上品で口当たりの良い感じにまとまっています。誤解を恐れずに言うと、オシャレです。
あと使用楽器について、「Prester John」のMV最後で使っている謎のアンティーク楽器が目を引きますが、アルバムを通して聴くと、木琴・鉄筋といった鍵盤打楽器がかなりフィーチャーされていて、こちらのほうが印象強いですね。
ということで、やはり昨今のサイケポップ界隈においては最重要バンドです。
どうやら次の作品の準備も出来てるらしいんで楽しみ。たぶんまた全然違う感じにしてきそうですが。
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