先週末、会社を休んで佐賀~長崎をぶらぶら旅行していたんですが、松浦鉄道という海沿いを走るローカル線に乗っていた時、ふとこれが聴きたくなったんですよね。
渚にては日本のインディーズバンドなんですが、知ってる人は少ないでしょう。
音楽性はGALAXIE 500やRed House Paintersなど、サッドコア/スロウコア系のドリーミーなサウンドを、日本の昭和歌謡やフォーク的な解釈で仕上げている感じ。
正直、邦楽好きの人にとってはサイケデリックな曲のアレンジや構成が不可解だろうし、洋楽好きの人にとってはフォーク要素が引っかかりそう、ということで、聴く人を選ぶアルバムだとは思います。
しかしハマるとずぶずぶハマります。
特に、歌詞が「疲れ果てた馬を見捨てて/沈みかけた船に乗るの」といった、往年の純文学のようなダウナーなドロップアウト感があるもので、サウンドと相まって強烈なアシッド感に襲われます。森田童子とかつげ義春が好きな人にはグッとくる、社会から零れ落ちてしまった人間の生々しい生活と、夢か現実かもわからない白昼夢、その境界があいまいな感じがたまりません。
都会の雑踏とかでとつぜん仰向けに寝転がってぼーっと空を眺めていたら、それだけでなんらかの「社会の常識的な枠組み」からドロップアウトした状態になれると思うのですが、そういった社会の枠組みから離脱するための、社会人の現実認識を狂わせるむず痒い麻薬的効能がこのアルバムにはあります。
いとおしいまでの人間の弱さと醜さ、それが許される忘れられた楽園のような。
ちょっとポエティック過ぎるか。
長崎の海沿いのローカル線に乗って、これ聴きながらぼーっとドロップアウト感に浸るとかもう、つげ義春的すぎて、令和も4年が経ったというのになんとも我ながらアレだなぁ、と思いますが、別にいいんです、アレでも。治らないので。これが俺だ。
そんなわけで、このアルバムはほんとアシッドフォークの名盤なんで、ぜひ令和を生きるサイケ好きの皆様にも聴いていただきたいですね。
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