【ALBUM REVIEW】Lily Chou-Chou / 呼吸(2001)

Japan


長崎旅行中、島原鉄道というローカル線に乗りながら諫早の青々とした水田風景を見ていたところ、ふとこのアルバムが聴きたくなりました。
水田といえばリリィシュシュ。単純です。

いかにも商業主義の作家というイメージな小林武史が、アーティスティックかつオルタナティブな音楽に振り切った作品。ミスチルとマイラバのイメージしかなかったので、初めて聞いたとき、こんな曲も作れるんだとビックリしましたね(大貫妙子とも一緒にやってるからわかるといえばわかるところも)。salyuもこの頃は声を張らず儚げなヴォーカルで神がかっています。
曲がとにかくダウナーでミステリアスで繊細。
オルタナティブ・ロック/ポストロック/トリップホップあたりを狙ったのかな。


歌詞も秀逸なんですよね。
「好きなのはあなたのすべてじゃなくて 風のような 傷跡のような 海の響きのような エロティック」
「あなたのくちびるに近づいてしまった あと1mmにある飽和への入り口」
などのロマンティックすぎるフレーズから、
「夕暮れの空は赤く みんなの視線 冷たく そして大きな石が 空から落ちてきて あたしを押しつぶす」
「死んだような街に 響くのは明日のレクイエム 生きていたいと 想わなくても」
などのダウナーな内容まで。
これを美しいメロディとフワフワした浮遊感のある歌声で歌われると、たまらなく耽美的で「ああ、もう頑張らなくて別にいいかな……」という気になってしまうんですよね。
RADIOHEAD『KID A』なんかと同じ、精神安定剤として機能する作品です。

日本ではこういうトリップ感、陶酔感のあるダウナーな音楽はあまり流行らないので、本当に貴重。
もっとこういう音楽があってもいいと思うんですけどね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました