中年男性が聴いててよいものかちょっぴりドギマギするレベルに、触れたら壊れてしまいそうなほどピュアな結晶が詰まった「Beabadoobieの心の中のユートピア」といった印象の美しい世界。
それがBeabadoobieの2枚目のアルバム『Beatopia』の全体的な印象です。
正直アルバム前は、「Cologne」のような挑発的なオルタナギターロックなサウンドで固めてくると勝手に期待していたので、思った以上にアコースティックでしっとりした印象に肩透かしを食らった気持ちでしたが、結果的にそれはよい裏切りでした。
1stアルバムは良い内容だったものの、キャッチー&ポップなオルタナギターロックとフォーキーな弾き語り調との曲の間に落差があって、特に後者が地味に感じるというウィークポイントがありました。今作では、キャッチーさや激しさが控えめになった分、アルバムトータルの完成度・一体感の高まりや音楽性の幅の広がりがあって、Beabadoobieの音楽性が一段階成熟した感じを受けました。
曲ごとに見ていくと、木漏れ日から差し込む朝日のような陽性のサイケデリア「Beatopia Cultsong」を筆頭に、前作ではまだあいまいだった仄かにサイケ感のあるサウンドプロダクションが弾き語り調の曲に彩りを添えていて、明確な聴きどころとなっています。
アルバムのコアに位置づけられている「Picture of us」の神聖で静謐なムードもまた染みます。
この曲はサポートメンバーとの共作らしいのですが、歌詞がなかなか意味深。特に「her」や「a capital」の意味。
サビについては元々「God starts with a capital letter」という歌詞だったようで、これなら割と意味は通りますが、仕上がったものはよりあいまいな表現になっているため、内省的な心象風景のようにも感じるし、私たちを取り巻く環境について歌っているようにも感じられます。American FootballのようなUSインディ系のギターアレンジもイイし、想像力を掻き立てられる良い曲です。
いっぽうオルタナギターロック系の曲では、シングルにもなっている「10:36」「Talk」など、アルバムの雰囲気から飛び出ないような形でシッカリ盛り上がり所として機能しています。特に個人的に気に入っているのが、静寂のヴァースからキャッチーなコーラスへ、そしてその後のノイジーな間奏への盛り上がりがスムーズに融合している「Don’t Get The Deal」。静と動のシンプルな構造ではなく、徐々に徐々にジワジワ盛り上げていく形に引き込まれます。
なんかオススメがシングル曲以外に偏ったな……。
それはさておき、『Beatopia』はかなり良きアルバムでした。歌詞をかみしめながら、聴けば聴くほど味が出る飽きがこない良作だと思います。
AOTYに入れようか最後まで迷ったのですが、2022年は正直良いアルバム多かったんで、ほぼ横並びで順位なんてつけられないよ!という感じ。他にも漏れたものがたくさんあるので、引き続きレビューしていきます。
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