【ALBUM REVIEW】Molchat Doma / Etazhi(2018)

Belarus

Molchat Domaはベラルーシのミンスクで活動するポストパンクバンド。よくSovietwaveやRossian Doomer Musicといったジャンルでも語られていますが、これらを掘り下げようとすると長くなるため、ここではざっくり「80年代のソ連で作られていたニューウェーブ音楽のリバイバルブーム」があり、エレクトロ(Synthwave)寄りがSovietwave、ポストパンク寄りがRossian Doomer Musicという説明にとどめておきます。

で、今回レビューするのは彼らの2ndアルバム『Etazhi』。
前述の「ソ連ニューウェーブリバイバル」みたいな文脈の通り、現代のバンドだと知らずに聴いていると、マジでソ連時代に活動していたバンドの当時の音源なのでは?と疑われるようなリアルな「ソビエト感」に肉薄しているうえ、非常に味のあるキャッチーさも持ち合わせている素晴らしい内容の作品です。

全体的な印象は、ストレートな「ダサカッコイイ」。
不快に感じるほどガチなダサさではなく、ちょっと笑ってしまうような素っ頓狂なサウンドとアレンジ、東欧のミュージシャンが前面に出しがちな哀愁のメロディ、「楽器買ったばかりの中学生が勢いで作った」感のあるシンプルだけど妙にクセになるシンセやギターリフ、などなど、イギリスやアメリカのポストパンクバンドだとどうしても普通にカッコ良さやアート性に振り切っちゃうところを、「田舎っぽくてあんまりカッコよくはないんだけど独特の味があってなぜか何度も聴きたくなるなあ」というダサさとカッコよさの絶妙なバランスに落とし込んでいて、しかもそれを計算ではなく天然でやってる感じのキャラクターが実にイイ。
聴くたびに「このバンド……好きだ」という想いが加速します。

音の質感についても、近年では珍しいローファイなモノラルMIXだったり、昔のテレビ番組のチープなステージスモークを思わせるリバーブ処理だったり、まるで「VHSでダビングした録画音源」を聴いているような味のあるラフさとレトロ感が、なお好いです。

欧米の洗練されたバンドだとあえて逸らしがちな「ガツンと来て欲しい時にガツンと来るコテコテアレンジの気持ち良さ」があったり、でもリズムは意外とタイトでモダンなディスコパンク調でカッコよかったり、と思ったら突然「普通ココにそんな間の抜けた音入れる?」というユーモラスなサウンドギミックもあり、しかもそれがポストパンク特有の重苦しい陰鬱さを中和していて、聴いていてほんとうに楽しい。
アルバム全体通しても、3~4分のコンパクトで勢いのある楽曲が小気味よく並んでいて、あ、もう終わっちゃった、と感じるほど聴き味が良い良盤です。

ちなみに冒頭に上げた彼らの代表曲「Судно」はTikTokで人気だったりして、マニアックな音楽性の割に再生数がすさまじい。
優れたスタジオや録音機器も、技巧的な演奏テクニックも、ハイセンスなオシャレさも要らない、さらに言葉の壁すら乗り越えて世界に広まっているのは、音楽のミラクルな瞬間ですねぇ。

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