【ALBUM REVIEW】Caroline Polachek / Desire, I Want to Turn Into You(2023)

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最近ハマっているCaroline Polachekの2ndアルバム『Desire, I Want to Turn Into You』。
これがなかなかの傑作。
80’s~90’sのポップスを基調としたサウンドプロダクションに、彼女の武器であるハイトーン・ファルセットが自由奔放に駆け巡る高性能ポップアルバムとなってます。

アルバムの序盤は、開幕にふさわしい「Welcome To My Island」、クールなダンスポップ「Bunny Is a Rider」、ロマンあふれる哀愁のラテンポップス「Sunset」と、曲のヴァリエーションが豊富なうえキャッチーでアップテンポな曲が続き、スルスルとアルバムの核となる中盤から後半の展開へ引き込まれます。

後半の展開は、まるで雲の上の天国を飛んでいるかのような荘厳で多幸感のあるムードに変わっていきます。
90’sなドラムンベースをバックに、GrimesとDidoという3人の歌姫による異色の豪華コラボで中盤の見せ場を作る「Fly To You」、“あなたはそこにいた 鏡で世界中を照らしてる/私はそこにいた 虫取り網(バタフライネット)であなたの光を捕まえようとしてる”というサビの歌詞がロマンチックな「Butterfly Net」、Massive Attackのような荘厳さを醸し出すトラックに神秘的な合唱団のリフレインでフィナーレを締めくくる「Billions」などなど。
ふわふわした神々しい雰囲気とともに、印象的な歌詞とメロディに耳を捕らえられ、深みにはまっていく感じ。
テンポが遅い曲も多いのですが、幻想的なコード進行の転調や、オートチューンとファルセットが組み合わさった予測不能なヴォーカルの躍動がリスナーを飽きさせないフックとして機能しており、退屈さを感じる瞬間はほとんどなくスルッと最後まで聴けてしまいます。

今のところ、今年のAOTYに入りそうな感じ(まだほとんど新譜買ってないけど)。

昨今のダンスポップ系女性シンガーはあんまり刺さらないことが多いんですけど、キャロラインに関しては元々インディー界隈のミュージシャンであることや、奇抜さや斬新さが控えめ(MVは割と攻めてますけど)で、かつ政治的・社会的なメッセージ性も薄いオーセンティックなポップアルバムであること、また、どこか欧州ロマンが感じられる美しく浮遊感のあるメロディやサウンドプロダクションなどが、自分としてはグッときたところです。
今風のメジャーな女性シンガーに怯んでしまうインディーリスナーにもオススメできるんじゃないかと思いますね。

あと彼女、意外に日本と関わりがある人なんですよね。
幼少期日本で暮らしていて、アニソンなどにも影響を受けつつ、特に小川美潮(80~90年代の女性シンガー)が好きらしいという、日本人でも知らない人が多いであろうマニアックなところを突いてくるあたり、音楽のセンスを感じて好きさが募ります。

1stの『Pang』は未聴なので、こちらも追って鑑賞していこうと思います。

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