
Moonshakeのデビューシングル『First』は、昔からシューゲイザーマニアの間で「Creationから出てるデビューシングルが、いい感じでシュゲってるらしい」みたいな感じで語られてきた作品です。
とはいえ、私がシューゲイズ作品を漁るようになった2000年ごろからこの作品はずっと廃盤のままで、今に至るまで入手困難な状況が続いていました。
しかしふとAmazonで検索してみると、国内の中古CD屋にストックがあるじゃないですか。ちょっと高いけど。
買ってしまいましたね。
内容はYouTubeとかでずっと聴いてたんで全然知ってるんですけど、うーんやっぱりうれしい。
Moonshakeは90年代前半に活動していたUKのインディバンド。
音楽スタイルは当時のToo Pureレーベルのバンド(StereolabやPramなど)に似て、ポストパンクやクラウトロックなどから影響を受けたエクスペリメンタル・ポップ。ただしこのCreationからリリースされた5曲入りのデビューシングルだけは、シューゲイズ的な側面から聴いても楽しめる内容になっています。
激しくトレモロがかかった眩暈のするディストーションギターの真ん中を、ローファイでドライなミックスのささやきvoがふわふわ乗っかる1曲目「Gravity」は、デビュー当時のMooseにも似た感じの音作り。
メンバーはMargaret Fiedlerと元The Wolfhounds(初期ナンバーガールっぽいノイジーなギターポップバンド)のDave Calahanの2人のソングライター兼Voがいる二頭体制。Daveのささくれ立ったギターワークに、Margaretの浮遊感のある女性voと甘いメロディが、偶然にもシューゲイズな趣を醸し出してます。
おまけにマイブラ『Loveless』のエンジニアの1人Guy Fixsenがプロデュース。このことがどれだけシューゲイズ要素にとってプラスなのかは正直不明なんですが(後述するLaikaはシューゲイズではないので)、シューゲイザー好きからするとこの情報だけでも垂涎モノなんですよねぇ。
この後のシングル以降(アルバム含む)はガラッと雰囲気が変わり、基本ダブ、クラウトロック、ポストパンク、サンプリングを多用するクラブミュージックの手法などを取り入れた、よりエクスペリメンタルな要素の強い音楽性が押し出され、シューゲイズ的な側面は欠片も存在しなくなります。
それ故か、はたまたレーベルがらみの権利の関係か不明ですが、昔からこのシングルだけは再販もされないし、デジタルやサブスクでもリリースされないんですよね。
もしかしたら、メンバーにとってはこの音楽性は本意ではなかったのかもしれません。(上記に挙げたYouTubeも非公式なので、いずれ消えるかも)
それゆえレア度が高まっていて、中古市場の価格もちょっとお高め。ちなみに私が購入したものは3000円近くしました。
それでもシューゲイズファンならば、ゲットして損はないかと思います。
ギターが歪んでるだけの中途半端なシューゲイズバンドを聴くよりは全然良いので。
ちなみにMargaret Fiedler含む一部メンバーは1stアルバムリリース後脱退して、プロデューサーだったGuy Fixsenと共にLaikaというバンドを結成します。
エクスペリメンタル・ポップなのは変わらず、こちらはトリップホップ、アンビエント、ジャズなどを取り入れた独特のクールでスペーシーで浮遊感のある音楽性になっていて、私もけっこう好きです。シューゲイズではないながらも、Moonshakeのその後の音楽性よりかは陶酔感や浮遊感といった効能の部分でシューゲイズに通底しているところはあるので、聴いてみると良いかもしれません。
こちらもいずれレビューしますね。
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