
Creation Record古参Ed Ball氏によるバンドTeenage Filmstars『Star』は、その昔シューゲイズ作品集めてた時に、まあソレっぽいということで買ったアルバムですが、居酒屋で大量の油モノと炭水化物をおつまみに劣悪な甲類焼酎をイッキ飲みして悪酔いした時のような強烈なサイケデリック効果に吐き気を催し、でもいつかはこういう強烈なサイケもキメれるようになるだろう、とCD棚に保存していた自分にとってはいわくつきの作品です。
当時はシューゲイザーや00年前後のネオサイケデリアを通じて深淵にして広大なサイケの扉を開いたばかりでしたが、今やいろいろとエグい音源も聴きなれた。
むしろもっと過剰な効能のサイケ音楽が聴きたいぜ。
今でしょう。聴くなら。
ということで、引っ張り出して聴いてみました。
ええっと……やっぱり大変キモチ悪い。
三半規管をダイレクトにかき回されるような、極めつけのバッドトリップ酩酊音楽。
1曲目にしてこのありさま。
なんだかわからんグシャーっとした実験サウンドだったらちょうど良いのに、結構ポップなメロディが鳴っているのが胃もたれします。
この調子でだいたい3~4曲目くらいですでに目が回ってくるんですが、なんとそれが54分も続くというのだからタチが悪い。
まあ『Loveless』が出てすぐの1992年リリース作品なんで、脱力女性Vo+ノイズギター+ダンサブルなリズムループでシューゲイズっぽいっちゃあシューゲイズっぽい「Loving」みたいな曲もあったり。
たゆたうようなメロディとサイケデリック&スペーシーなサウンドが陶酔感をかもす「Inner Space」。
マイブラ「Soon」のリズムのサンプリングが聞こえてくる「Flashes」などがあるので、シューゲ好きにも刺さるっちゃあ刺さります。
しかしそれ以外のほとんどは、耳障りの良くないディストーションギターの洪水に、とっ散らかった部屋のように意味不明のサンプリングやサウンドコラージュが次々襲ってくる覚めない悪夢、そして更にサウンド全体にトレモロ・パン・フランジャー・フェイザーといった“揺らし系”のエフェクトを過剰にかけてグニャグニャと変形させたうえ吸い込まれるような逆回転エフェクトでひっくり返したりと、リスナーの視界と平衡感覚を完膚なきまでにブチ壊す「体感型バッドトリップサウンド」というのが実際のところです。
特にこの「Apple」という曲は悪辣。
最初っから最後まで強烈なフランジャーのシュゴォーッというジェットサウンドに、ユラユラゆらめくトレモロサウンド他いろんな楽器が多重混入していて眩暈を引き起こすこと必死。
私はサイケデリック音楽を酒を飲みながら聴いて合法的にトリップ感や浮遊感を愉しんでおりますが、こいつでそれをやるとほんとに悪酔いしてヴォミットを致すことになると思います。大変に危険です。
しかし、こんな危険な作品も、幸か不幸かサブスクで出まわってるみたいでお手軽にお楽しみいただけます。
いいんでしょうか。
シューゲイズやネオサイケデリアの上品でソフトな陶酔感に浸るのもイイけど、たまには羽目を外してハードにバッドトリップキメてみたいぜ、そんなヤンチャなサイケキッズの皆さんであるならば、是非1度摂取してみてほしいサイケの傑作盤だと思います。
私も毎日は聴けないけど、たま~に聴いて、瞳孔が渦巻き模様になりながらダウナートリップを致したい所存でございます。
※ちなみにTeenage Filmstarsはこのアルバムの後も、性懲りもなく嫌がらせのような強烈サイケデリックアルバムを2~3枚出し続けてます。そっちはシューゲの残り香すら消えて、呪術的ガレージサイケにやっぱり過剰なトレモロや逆回転をかけるなどの悪辣な三半規管破壊エフェクトが襲ってくる極悪盤なので、『Star』が物足りないと感じた猛者はそっちもチェックしてみましょう。
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