
海外のレビューサイトを見ていてふと目に留まったアートワーク。
気になって何曲か試聴してみたところ、大変好みの音楽性だったので即購入してしまいました。
変態エレクトロポップユニットKnowerの活動で知られるGenevieve Artadi、そのソロ2作目となるアルバム『Forever Forever』です。
音楽の全体的な印象は、ジャズ・ネオソウルをベースにしながらサイケポップ・オルタナインディロックを掛け合わせたような感じで、ありそうでなかった個性的な音。
これまではエレクトロなサウンドスタイルをベースにしていたようなのでこれが完成形ではないのでしょうが、このオーソドックスなバンド編成のサウンドもシンプルに歌の良さや演奏のキレ味が伝わってきてメチャクチャハマってる気がします。
まずこのキラッキラのドリーミーサイケデリックポップな「Visionary」。
ジャズ的なコード進行の転調に快感を感じてしまう体質なので、この曲の持つめくるめくコードワークとメロディにはたまらんものがあります。
こういったコードワークは単純に音としての快楽性もあるし、先の展開が読めないワクワク感もあって。
伝統的なポップやロックのスケールの外側にある「まだ描かれていない音風景」を見るような思いがして、楽しくなります。
加えて、ヴォーカルがウィスパー系なのがサウンドプロダクションの面白さと噛み合わさって聴きやすいですね。
曲の構成も6/8から4/4に拍子が変化したりと小技が効いていて、掴みどころのないフワフワした印象を強めることに成功してます。
これでもこんなにポップに聴かせられるというのが驚き。
彼女はMVもなかなか秀逸ですね。
アイデア一発勝負で強い印象を残す内容というか。
上記の「Plate」は盟友Louis Coleのドラムが躍動するオルタナティブ・ロック+ジャズでめちゃくちゃカッコイイんですが、曲名と曲の持つ緊張感を「頭に“皿”を載せるかくし芸をワンカットで撮る」というアイデアの意外性と、衣装含めた画面の美術的な色彩の工夫と相まって、インパクトが抜群です。
前述の「Visionary」のMVも、見事に曲の雰囲気とズレたレトロなLAメタル風の衣装とパフォーマンスが良い意味での違和感を生み、それがフックになってます。
KnowerのMVはもっと強烈なんで、これでも大人しくしてるほうなのかもしれないですけどね。
西洋・東洋・南米、色々な要素の混ざった無国籍な音世界が万華鏡のように展開されているのも本作の特徴で、このアルバムのタイトルトラックともなっている「Forever Forever」では、トロピカルなブラジリアンジャズのようなメロディを聴くことが出来ます。
どこか『Milky Night』の頃のStereolabを彷彿とさせる印象。
こちらの「Black Shirts」では、トロピカルな美しいメロディとともにファンキーなグルーヴが炸裂しています。
陶酔感・浮遊感がありながらも割と肉体的な熱量もある。
スローテンポの曲も合間に入れながら、アルバムの流れとしての緩急も抜群にイイ感じです。
■まとめ
アルバム全体通して魅力的な曲が多く、私が音楽に求めているもの(非日常感・陶酔感・熱量)がたくさん詰まった、今年のAOTY入りは必至な内容でした。
イヤな現実を素敵に忘れさせてくれます。
最近は彼女のような、ジャズ・ソウル・R&Bの素養を持つミュージシャンがインディロック的な手法を取り入れることが増えてきてますが、この流れは非常に面白いのでもっと流行ってほしいですね。
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