【ALBUM REVIEW】Coloresantos / Tercer Paisaje(2017)

Chile

チリの首都サンチアゴ拠点のシューゲイズバンド、Coloresantos(スペイン語でコロレサントス、Color Saintsの意)は男女ツインヴォーカルの4人組で、マイブラ直系のディストーション・ギターの大洪水的なシューゲイズではなく、Asobi Seksuなどと通底するタイプの、ポップでドリーミーでノイジーな「シューゲイズポップ」的音楽性が魅力のバンドです。
いまも活動しているのかは不明ですが、作品は現時点でこの2017年作『Tercer Paisaje』(テルセル・パイサーヒ、Third Landscapeの意)のみ。
しかしこのアルバムがなかなか名作というか、自分もけっこう長く聴き続けている完成度の高い作品なので、ご紹介しようと思います。


まずはこのアルバム開幕曲「Pilots」から。
アルペジオ+空間系ギターからの轟音ノイズというメリハリの効いたアレンジが心地よいですねぇ。
タイトル通り大空を飛んでいるかような浮遊感たっぷりのヴォーカルも最高に清々しい。
そして何より、スペイン語の歌詞が醸し出す南米チリのバイブスが良いんですよ。
もちろん、英詞のほうが歌詞の意味を理解しやすい、という点では良いのですが、その国のネイティブ言語だと、語感、韻、歌に込める感情などのニュアンスが濃厚になる感じがあって、好きなんですよね。
英語や日本語以外の「耳慣れない語感」も、音として新鮮に聴こえて楽しいですし。
とはいえ他のチリバンドに比べるとあっさりしていて、初めて聴く人にも聴きやすいかと思います。


彼ら屈指の名曲「Horas」(Hoursの意)。
夢と現実のはざまにある微睡みの世界というか、幽玄な世界を演出する甘美なコードワークとメロディ、折り重なる空間系ギターの波動が彼岸へと誘ってくれます。
この曲はほんとにイイですねぇ。南米のエキゾチックなムードも多分にあって、しかも陶酔感も抜群。メチャクチャ好きな曲です。


メジャーセブンスの甘いコードワークとポップなメロディが心地よい6曲目「Parques」(Parksの意)からは、男性ヴォーカル/ギターのRodrigo Montesが歌っています。
実はこのアルバム、他にはないちょっと面白い構成になっていて、ヴォーカルが前半と後半で入れ替わるんですよね。
前半の「Horas」まではいかにもシューゲ的な魅力を持った女性ヴォーカル/キーボードのKimberly Burgosですが、後半はファルセットを用いたりとややインディポップ寄りのRodrigoがヴォーカルを取ります。
ツインヴォーカルはシューゲバンドに多いですが、ここまでパッキリ分けた構成にするのは面白いなぁと思いました。

アルバムの総評としては、甘く気怠い響きを持ったコードワークとメロディが常に夢見心地な気分を盛り立ててくれるし、疾走感のある楽曲とミドルテンポの楽曲が心地よい緩急を生み出し、さらに2人の個性の違うヴォーカリストにインスト曲まであるという多彩な楽曲群、そしてアルバム最後には10分超の壮大な楽曲「Juno」が控えているという、全8曲とは思えないほどドラマチックな内容に仕上がっていて、非常に完成度が高いと思います。
未聴の方はサブスクもあるのでぜひ聴いてみてください。

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