Mei Semones / Kabutomushi(2024)

新譜
00年前後のカレッジチャート系USインディというか、日本だと空気公団あたりを思わせるというか、そんな懐かしいムード(本人は青葉市子が好きみたいですが)を漂わせる日系アメリカンのギタリスト/シンガー、Mei Semonesの5曲入りシングル。

半分英詞・半分日本語詞という不思議なソングライティングが特徴で、特に日本語詞の部分は最近の日本のミュージシャンだとやらないような、メロディに対して少しアンバランスに感じる独特な言葉の嵌め方になっており、味があります。70年代のニューミュージックの人たちを思わせるというか。今の商業的に完成され過ぎて型に嵌った日本のポップやロックと比べるとだいぶ耳慣れない感じで、それが面白いです。
同時に歌詞の内容も朴訥というか、「田舎に行きたい」とか「おばあちゃんの手作りおはぎ」とかレトロなニュアンスの言葉を何気ないほわんとした歌声で歌うので、日本の田舎の風景とか子供の頃の記憶とかが呼び起こされてノスタルジックな気持ちになります。若い世代のしかもアメリカで活動している子の歌がなぜ日本の中年男性たる私の記憶を呼び起こすのか、ちょっと不思議な感覚に陥りますが、まあそれだけ普遍的な表現ということでしょう。バークリー音楽大学仕込みのジャジーなギターの爪弾きがポロロンと絡むのも、ジャズが活き活きとしていた昭和の懐かしい感じをいっそう引き立てます。まあ自分にとっての昭和は小学生くらいまでのわずかな記憶しかないんですけど(バブル末期・空き地で虫取り・ファミコン・サッカー・漫画、そんな楽しい時代)。
ストリングスを中心としたバックのアコースティックなサウンドも繊細で、いちいち沁みます。5曲しか入っていないのに、すごい満足度。

まだシングルのみのリリースなので、今後どうなっていくのか期待大ですねえ。

評価:★★★★ 8/10

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