Crumbは「Locket」のサイケデリックなPVがバズりインディ界隈でブレイクしたように記憶しているが、その後はいまいち地味な存在に落ち着いていたように感じる。初期は気だるげなメロディが一番立って聴こえており、その周りをトロトロフニャフニャのやわらかいサウンドが取り囲んでいて、二日酔いサイケポップとでも言おうか、そこがサイケ感を催すキモチ良いポイントだった。それが徐々にオルタナインディロック色が強くなり、2ndアルバムではリズムが前に出てきて、音の質感も荒々しくなった。どちらも魅力に感じつつも、やはり初期のトロンとした音像は他に代えがたい魅力なんだよな、次のアルバムはどうなるのか。そんなことをつらつらと考えながら迎えた3rdアルバムのリリース。
これがかなりの力作で驚いた。
これがかなりの力作で驚いた。
キャッチーなフックが随所に仕掛けられた短めの曲がたくさん収録されていて、それでいて曲間をつなぐ間奏曲もありアルバムトータルの流れにも気を配ったドラマチックな作りだ。「Locket」のような爆発的拡散力を持つ曲こそないものの、90’sクラブミュージック風の軽快なリズムが新味な「Side By Side」、熱にうなされるようなメロディと不穏なサウンドがむず痒い「The Bug」(デュビアっぽいGくんが徘徊するキモカワMVも印象的)、ジャズ的なポリリズムが引っ掻き回す混濁した音世界に興奮する「Crushxd」など、ハイライトとなる曲がしっかり要所で盛り上がりどころを作っている。そして相変わらずVoリラ・ラマニの気持ちの悪い夢の中にいるような気だるげなヴォーカル&メロディも全編を支配しており、夢の微睡みのなかで始まり、夜が明ける前にそのまま微睡みの中へ消えていくような倦怠感混じりの朦朧とした音世界は、数あるサイケポップの中でも唯一無二の酩酊感。さらに、マレーシアに住むリラの祖母の歌声から始まるアジアンなムードの表題曲「AMAMA」、途中で何度もリズムパターンが変わるいびつな曲構成の「Genie」、テンポのアップダウンが思わぬところで入るまさに取り留めのない夢の世界をさまよっているような「Sleep Talk」など不思議なアレンジを持つ曲も多く収録。そのミステリアスさに好奇心を刺激され、何度も何度も繰り返し聴きたくなる。
当初は期待と心配半々といったところだったものの、蓋を開けてみればこれまでの活動の集大成ともいえるような期待を上回る素晴らしい出来。今年のベスト候補に入る傑作サイケポップアルバムだ。
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