Francis of Delirium / Lighthouse(2024)

新譜

ルクセンブルク拠点のシンガーソングライター、ヤナ・バーリッチを中心としたバンド、Francis of Delirium。KEXPのライブでなかなか渋いディストーションギターを鳴らしており好感を持った次第。オーソドックスなバンド形態ではあるが、基本的にはプロデューサーやサポートミュージシャンと協働しながらのソロ活動であるようだ。

しなやかな表現力を持つヴォーカル、幻想的なコーラスワーク、質実剛健なバンドの演奏。Weyes Bloodやグランジなどと比較されることが多いようで、初期のEPを聴くと確かにグランジやエモ、USポップロックの影響が強い。ただ本作を聴く限りその辺のUS感は薄れており、個人的にはKeaneやMew、JJ72などを筆頭とした00年初頭の欧州のギターロックバンドを連想した。メロディが極めてキャッチーな彼らに比べ彼女のソングライティングは誠実過ぎるかもしれないが、美しきオルタナギターロックという要素に加え、清涼感を帯びたメロディとクラシカルな気品に、共通した魅力を感じた。
恋に落ちた少女の昂揚感と、戸惑いや混乱が綴られた青く儚い歌詞を、柔らかく誠実な歌声で歌い上げる。至ってシンプルな音楽性ながら、グランジ仕込みのディストーションギターと、ドリームポップ/ポストロック的な美しい空間系ギターのメリハリも的確で飽きさせない。自然あふれる冷涼な気候のルクセンブルクの景色が思い浮かぶような涼しげなサウンドと合わせて、女性ソングライターが百花繚乱の現在でもしっかりと強みになっている。

デビューアルバムとなる本作『Lighthouse』の作りも素晴らしい。序盤から美しい曲が連発し、「Ballet Dancers」「Real Love」「First Touch」「Want You」とどれも珠玉のソングライティングで、クールで切ない疾走感が心地よい代表曲「Blue Tuesday」まで完璧の展開。フックの効いた歌とダイナミックな演奏が耳を惹く「Something’s Changed」を始めとした後半の流れもまた秀逸で、青春の物語をエモーショナルに締めくくる「Give It Back To Me」で壮大な満足感を与えてくれる。

全く知らなかったバンドだっただけに、非常に嬉しい出会いである。
今後の活動にも注目していきたいバンドだ。
評価:★★★★ 8/10

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