シングルレビュー2024年10月

新譜
ミニアルバム未満の作品レビュー。
前回のシングルレビューからずっと豊作なので、11月分と分けて軽く。

Mei Simones / Dangomushi


またもや米在住とは思えない一昔前の日本の幼年期のノスタルジーを歌う歌詞。Kabutomushiが子供の頃の日本の生活や、日本からアメリカへの突然の別れみたいなものを寂しく切なく歌っていたのに対し、同じ虫シリーズのこちらは生き物がたくさん登場する可愛らしい内容でほんわかとする(空想にふける1人遊びをしていたと見ると少しアレだが)。

Heartworms / War Plane


ロンドンの新人バンドHeartworms。寄生虫に肖るバンド名ともども不穏な音楽性で、グラグラと煮えたぎるコールタールのようなリフと共に、推進力のあるリズムとシリアスな歌詞を煽情的に歌うヴォーカルがダークな高揚感を与えてくれる。ポストパンクと紹介されることが多いが、私が聴いた感じクラウトロックや80’sのゴスやポストパンクに影響を受けた90’sのトリップポップやテクノなどのクラブミュージック(つまりエレクトロクラッシュ?)に近いニュアンスだ。軍服を着こなす特異なファッションセンスが目を引く中心人物ジョジョ・オームのカリスマティックな佇まいもただものではなく、来年リリースされるというダン・キャリープロデュースによるデビューアルバムが楽しみである。

Ladytron / The Night (Stealing Sheep Remix)


Stealing Sheepによるリミックスなのだが、バチバチにカッコいいアレンジで、もはや別の曲である。最近どうしているのかな、と心配だったので、良い活動が見れて安心。

The Armed / Everlasting Gaze


ハードコアスラッシュシューゲイズといった様相をもはや呈しているThe Armedの3曲入りEP+前作のリミックス作品。いかにも肉体的なハードコア・メタルの暴力性と、いかにも文系的な幻想的コーラスと甘いメロディを1つにまとめた偉業。これまでのアルバムにもその芽は見て取れたが、このシングルでは両極の共存がより露わとなっている。前作まででポップなThe Armedは完成した感があるので、この路線でアルバム1枚作ってみて欲しいんだけど、小出しにされちゃったので無理かなー。

Orange Flavored Cigarettes / 10


韓国のドリームポップバンド。ビタースウィートな転調メロディをなぞる繊細なウィスパーVoにトロントロンなサウンドに夢見心地感が極まる。これはたまらない。

Parcels / Leaveyourlove


1stアルバムが大好きでかなり繰り返し聴いたけどその後全くフォローしてなかったんで、2ndアルバムが出ていたことすら知らなかったのだが、このシングルであまり変わらない姿で再開できて嬉しい。ソフトなコーラスワークに甘いVo、それとは逆にボトムの低いベースのホッコリグルーヴが気持ちいい。

Lambrini Girls / Big Dick Energy


最後は最近ハマっていて過去作も熱烈に遡り中のLambrini Girls。パンクバンドも色々いる昨今だけど、ここまでギャンギャン噛み付いてくる狂犬タイプのピュアなパンクバンドはなかなかいない。UKパンクスらしいヒネリの効いたリズムやオルタナなコードワーク、ギターとベース2人の割とキレたノイズなどに憤りが詰まっており、どこを切っても刺激まみれでカッコいい。「デカチンエナジー」という曲名が直球過ぎてウケるが、歌詞はSNS上でのセクハラクソリプやDMなどを想起する「心のデカチン」を抑えられずに女性に望まれない行動・言動をする自分本位の男性へ「実際のお前のチンコそんなデカくねえから!」とブチかまし、旧式の男性優位主義を爆散させる同時代的な痛快さがある。
新年早々アルバムが出るらしいが、すでにリードシングルとして「Company Culture」(直訳:企業文化…笑)などのヤバイ曲も出ているので、こいつは来年楽しくなりそうだ。

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