ミニアルバム未満の作品レビュー。10月に引き続き豊作で、アルバム作品を腰据えてじっくり聴き込めないレベルの嬉しい悲鳴。
ファンキーなベースラインがグイグイ引っ張る「Drifting」と同系統のドリーミーシンセポップ。最近のNight Tapesはソングライティングが好調だ。初期は地味な曲も多かったけれど、近作はどの曲もメロディのキレが非常に良い。ネオンの光るレトロな都会の夜景がピッタリと合うNight Tapesの世界観もより鮮明になっているし、期待は高まるばかりである。
待望の新曲は、ローファイが流行っていた頃のオルタナカントリーや、うっすらペイズリーアンダーグラウンドのサイケ感などを感じさせるユルい雰囲気が魅力の曲。しかし、それにしたってコード進行がミニマルすぎて笑う。こんな実験的な曲をアルバムのリードシングルにしてくるあたり期待できる。1stの頃のノイズギターは聴こえないが、ベースレス(バリトンギター)の風通しの良いサウンドと脱力Voは相変わらずで、カラッとしたアメリカの空気感が良く出ており、日本では今時分の気候にぴったりだ。
叔父様方が元気そうで何よりだ。デビュー以来ブランクらしいブランクもなくずっと活動し続けていて、今年もElbow史上もっとも溌剌とした内容のアルバムを出しただけでなく、再びこんなノリノリな曲を出すなんて。ファンとしては嬉しいけれど、サイケな毒っ気が抜けた健全な作風が続いているので、どんよりうっとり陶酔感に浸るような曲もそろそろ聴きたくなってきたような。しかしMVのコピバンは誰なんだ。
Elbowが元気な中、こちらのマンチェスターの叔父様方も帰ってきた。Dovesらしいシネマティックで壮大なサウンド・プロダクションと、ロマンチックなメロディ、そしてジミ・グッドウィンの渋みの効いたヴォーカル。前作も良かったし、これは期待できる。来年2月にアルバムが出るとのこと(来年2月くらいまで新譜ラッシュじゃないか?)。今から楽しみ過ぎる。
韓国インディのシンガーソングライター/ベーシスト、イ・ルリの新曲。総じて80年代のニューウェーブポップに影響を受けた都会的でキラキラしたサウンドを展開しているが、今回はエリザベス・フレイザー風のヴォーカルによる美しいバラードで、かつアジアの自然を感じさせる幻想的なメロディラインが実にイイ。
短い曲が多かったGlassmanetの作品のなかでは、割としっかり目な尺(それでも短いが)でまとめられてスケール感が増した4曲入りEP。オーロラのようなコーラスワーク、転調の甘いメロディ、エフェクティブなギターサウンド、幻想的なキーボード、すべてが良い。最近はメンバーも加入したようで、演奏のクオリティもアップ。ノルウェーのVinyl Williamsかと思わしむる極上の神秘的サイケポップである。
スペーシー系インストサイケバンドL’eclairとスイスのサイケポップデュオKlaus Johann Grobeとのコラボ作品。どこかミルキーナイトの頃のStereolab感を醸し出すトロピカルグルーヴをベースに、コズミックなシンセサイザーの波が押し寄せるたびにトリップ感が増大する、いつまでも漂っていたい非常にキモチイイ曲。
トリスタン師の新曲、相変わらずゴムボールのように弾むリズムとネットリした低音ベース、ときおりアシッドハウスなシークエンスも絡みながらの高揚と弛緩を繰り返すアッパーな陶酔感がたまらんですな。この境地が果たして禅なのかはよく分からないが。
来年2月リリースのニューアルバムからのリードシングル。管弦楽とピアノが入って音世界が広がり、今までの唯一無二なドリームフォーク的サウンドから、一般層にも届きそうな説得力というか、いい意味での既視感を獲得したように思う。個人的には新居昭乃を思い出だしたりした。とはいえ、相変わらず転調の連続による幻想的なメロディラインが、ポップスの定石とともに現実の理をも溶かしていき、神秘の世界へと誘ってくれる。美しい曲だ。
去年の傑作ミニアルバム『Subtle Body Dawn』以来、クラシカルドリームポップというか、Mercury Revが『Deserter’s Song』のころにやっていたものに近しい、クラシックやオールディーズなジャズ、ポップス、映画音楽を分解してそれをドリーミーに再構築する実験というか。不思議なファンタジー映画のサントラを聴いているような感覚。10月に出した「Coals」と合わせて、とても良いムード。
最後に、来年早々に3枚目のアルバムが出るSquid。その新作からのリードシングル。ファミコン的な電子音から入るものの、全体的には寒々しい草原地帯をイメージさせる憂鬱さと寂寥感を湛えたオーガニックな曲。USインディ的なクリーントーンのギターアンサンブルも抒情的だ。
パリッとした皮、ってなんかこんがり焼いたチキンを連想するおいしそうなタイトルだなと思ってたら、歌詞はカニバリズムをテーマにしたディストピア小説「Tender Is The Flesh」(すごく面白そうなのだが未邦訳のようだ)に着想を得たものらしく、うわぁ…となった。しかし過激な印象を抱かせるものでなく、食人が当たり前になった世界において、道徳や倫理の境目があいまいになった人物の不気味な呟きで構成されている歌詞で、悪夢の中をさまよっているような、後味の悪い、でもちょっと背徳的な心地よさもある、そんなダウナーな陶酔感が得られる内容だ。
一方全く別の視点として、サウンドの印象が結構変わっている点も注目したい。高音域が強調された繊細で一体感の増した録音とミックスになっているのだが、録音がダン・キャリーからEnglish Teacherのプロデュースをやっていたマルタ・サローニに変わっているので、そのあたりからくるものか。この変化もニューアルバムでの楽しみの1つだ。
伊藤高志の映像作品を編集したPVも、曲の持つディストピア感と通底した不穏さがあって良い。伊藤高志はAndy StottのMVで初めて知ったのだけども、国内の知られざる才能を海外から逆輸入で知るのは嬉しさ半分、悔しさも半分である。アート界隈では知られている人なのかもしれないけれど、それをポップ、エンタメ界隈が拾い上げる懐の深さが日本にも欲しいところだ。(かつてはサブカル界隈がその役目を負っていたのだけど、その層は雲散霧消している昨今だ)
Night Tapes / To Be Free
ファンキーなベースラインがグイグイ引っ張る「Drifting」と同系統のドリーミーシンセポップ。最近のNight Tapesはソングライティングが好調だ。初期は地味な曲も多かったけれど、近作はどの曲もメロディのキレが非常に良い。ネオンの光るレトロな都会の夜景がピッタリと合うNight Tapesの世界観もより鮮明になっているし、期待は高まるばかりである。
Horsegirl / 2468
待望の新曲は、ローファイが流行っていた頃のオルタナカントリーや、うっすらペイズリーアンダーグラウンドのサイケ感などを感じさせるユルい雰囲気が魅力の曲。しかし、それにしたってコード進行がミニマルすぎて笑う。こんな実験的な曲をアルバムのリードシングルにしてくるあたり期待できる。1stの頃のノイズギターは聴こえないが、ベースレス(バリトンギター)の風通しの良いサウンドと脱力Voは相変わらずで、カラッとしたアメリカの空気感が良く出ており、日本では今時分の気候にぴったりだ。
Elbow / Adriana Again
叔父様方が元気そうで何よりだ。デビュー以来ブランクらしいブランクもなくずっと活動し続けていて、今年もElbow史上もっとも溌剌とした内容のアルバムを出しただけでなく、再びこんなノリノリな曲を出すなんて。ファンとしては嬉しいけれど、サイケな毒っ気が抜けた健全な作風が続いているので、どんよりうっとり陶酔感に浸るような曲もそろそろ聴きたくなってきたような。しかしMVのコピバンは誰なんだ。
Doves / Renegade
Elbowが元気な中、こちらのマンチェスターの叔父様方も帰ってきた。Dovesらしいシネマティックで壮大なサウンド・プロダクションと、ロマンチックなメロディ、そしてジミ・グッドウィンの渋みの効いたヴォーカル。前作も良かったし、これは期待できる。来年2月にアルバムが出るとのこと(来年2月くらいまで新譜ラッシュじゃないか?)。今から楽しみ過ぎる。
Luli Lee / My Melody
韓国インディのシンガーソングライター/ベーシスト、イ・ルリの新曲。総じて80年代のニューウェーブポップに影響を受けた都会的でキラキラしたサウンドを展開しているが、今回はエリザベス・フレイザー風のヴォーカルによる美しいバラードで、かつアジアの自然を感じさせる幻想的なメロディラインが実にイイ。
Glassmanet / Flow
短い曲が多かったGlassmanetの作品のなかでは、割としっかり目な尺(それでも短いが)でまとめられてスケール感が増した4曲入りEP。オーロラのようなコーラスワーク、転調の甘いメロディ、エフェクティブなギターサウンド、幻想的なキーボード、すべてが良い。最近はメンバーも加入したようで、演奏のクオリティもアップ。ノルウェーのVinyl Williamsかと思わしむる極上の神秘的サイケポップである。
L’eclair & Klaus Johann Grobe / Lotus
スペーシー系インストサイケバンドL’eclairとスイスのサイケポップデュオKlaus Johann Grobeとのコラボ作品。どこかミルキーナイトの頃のStereolab感を醸し出すトロピカルグルーヴをベースに、コズミックなシンセサイザーの波が押し寄せるたびにトリップ感が増大する、いつまでも漂っていたい非常にキモチイイ曲。
Tristan / Atomic Zen
トリスタン師の新曲、相変わらずゴムボールのように弾むリズムとネットリした低音ベース、ときおりアシッドハウスなシークエンスも絡みながらの高揚と弛緩を繰り返すアッパーな陶酔感がたまらんですな。この境地が果たして禅なのかはよく分からないが。
青葉市子 / Luciferine
来年2月リリースのニューアルバムからのリードシングル。管弦楽とピアノが入って音世界が広がり、今までの唯一無二なドリームフォーク的サウンドから、一般層にも届きそうな説得力というか、いい意味での既視感を獲得したように思う。個人的には新居昭乃を思い出だしたりした。とはいえ、相変わらず転調の連続による幻想的なメロディラインが、ポップスの定石とともに現実の理をも溶かしていき、神秘の世界へと誘ってくれる。美しい曲だ。
Anna Wise / Arrogant
去年の傑作ミニアルバム『Subtle Body Dawn』以来、クラシカルドリームポップというか、Mercury Revが『Deserter’s Song』のころにやっていたものに近しい、クラシックやオールディーズなジャズ、ポップス、映画音楽を分解してそれをドリーミーに再構築する実験というか。不思議なファンタジー映画のサントラを聴いているような感覚。10月に出した「Coals」と合わせて、とても良いムード。
Squid / Crispy Skin
最後に、来年早々に3枚目のアルバムが出るSquid。その新作からのリードシングル。ファミコン的な電子音から入るものの、全体的には寒々しい草原地帯をイメージさせる憂鬱さと寂寥感を湛えたオーガニックな曲。USインディ的なクリーントーンのギターアンサンブルも抒情的だ。
パリッとした皮、ってなんかこんがり焼いたチキンを連想するおいしそうなタイトルだなと思ってたら、歌詞はカニバリズムをテーマにしたディストピア小説「Tender Is The Flesh」(すごく面白そうなのだが未邦訳のようだ)に着想を得たものらしく、うわぁ…となった。しかし過激な印象を抱かせるものでなく、食人が当たり前になった世界において、道徳や倫理の境目があいまいになった人物の不気味な呟きで構成されている歌詞で、悪夢の中をさまよっているような、後味の悪い、でもちょっと背徳的な心地よさもある、そんなダウナーな陶酔感が得られる内容だ。
一方全く別の視点として、サウンドの印象が結構変わっている点も注目したい。高音域が強調された繊細で一体感の増した録音とミックスになっているのだが、録音がダン・キャリーからEnglish Teacherのプロデュースをやっていたマルタ・サローニに変わっているので、そのあたりからくるものか。この変化もニューアルバムでの楽しみの1つだ。
伊藤高志の映像作品を編集したPVも、曲の持つディストピア感と通底した不穏さがあって良い。伊藤高志はAndy StottのMVで初めて知ったのだけども、国内の知られざる才能を海外から逆輸入で知るのは嬉しさ半分、悔しさも半分である。アート界隈では知られている人なのかもしれないけれど、それをポップ、エンタメ界隈が拾い上げる懐の深さが日本にも欲しいところだ。(かつてはサブカル界隈がその役目を負っていたのだけど、その層は雲散霧消している昨今だ)
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