Corridor / Mimi(2024)

新譜

Sub Popレーベルから出しているカナダのバンドCorridorの4thアルバム。
しかしヘンなバンドである。入りはクラウトロック寄りのポストパンクかな?と思うが、しばらく聴いてるとエモ寄りのUSインディかな?となってきて、さらに聞いていると少しサイケ入ってる?いやドリポ?あやっぱシューゲかな?おやフレンチポップ?みたいに印象がとっ散らかっていく。サウンドも脱力ハーモニーの美メロVo、反復するモトリックなリズム隊、トレブリー&ノイジーなサイケギター、機械的な電子音の断片とデジタル感の強いミックス処理などがゴチャッと一体感無さげに放り込まれている。しかし、幸いにしてその一体感のなさが不快感となって襲って来ることはなく、ひとクセあるリフやメロディ、コード進行が頭に残って「アレがもう1回聴きてえなあ」となんとなく再生ボタンを押してしまう、そんな奇妙な魅力がある作品に仕上がっている。
電子音と痙攣ディレイギターなどギミック満載のサウンドから意表を突いて美ハーモニーへ移行するテコヘンな曲「Mon Argent」に始まり、昔のゲームミュージックのようなメロディとサウンドがクセになる軽快な「Jump Cut」、燦めきとハーモニーが眩しい陽性のサイケデリックサウンド「Chenil」、フレンチポップな哀愁メロディが滴り落ちる「Porte Ouverte」などなど、一曲ごとに個性があって楽しく、あっという間に聴き終わってしまう。もともと8曲32分とコンパクトな作品ではあるがそれ以上に短く感じる。たくさんのアイデアが詰め込まれているにも関わらず、不思議と散漫な印象はない。革新的なサウンドかというと違う気がするし、安易なカテゴライズを拒むかのようなサウンドは取り扱いが難しいが、少なくとも変異種として、真っ当な音楽は聴き飽きてしまった好奇心旺盛なインディリスナーの耳を楽しませてくれることは間違いない好盤である。
蛇足ながら、カナダは地域によってフランス語が公用語だったりすることもあり、特にこのCorridorやMen I Trustなどのモントリオール出身のインディバンドは欧州とアメリカの両方の影響が混ざっていて他にない魅力がある。こういった地域性も、インディ音楽の非常に面白いところだ。
評価:★★★★ 8/10

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