Yndling / Mood Booster(2024)

新譜

ノルウェー発、シリエ・エスペヴィクによるドリームポップ・ユニットYndlingのデビューアルバム。Yndlingは英語でFavoriteの意味で、ノルウェー発音だとインリン。なんか昔そんな人が…まあそれはいいとして、私は本来この手のベッドルームポップ的なソロアーティストはあまり聴かないのだけど、Spotifyアルゴリズムに「Never as Easy」をオススメされ、ベッドルームを逸脱した北欧らしい爽やかでキャッチーなメロディラインが引っ掛かり、ハマってしまった次第。
いつのまにかモダンなドリームポップのお手本となっているBeach Houseや、どこか元Lushのエマ・アンダーソンがやっていたSing〜Singを彷彿とさせる、メロディもサウンドも甘々な、まさに「ドリーミーなポップソング」が詰まった作品だ。滑らかな液体のようなトロントロンのギターアルペジオ、七色に輝くオーロラのようなシンセ、余韻たっぷりのリバーブ・ディレイの棚引きが、極上にスウィートなヴォーカルをさらに引き立てている。
前半からメランコリックな表題曲「Mood Booster」、前述した名曲「Never as Easy」、一転して明るいシンセポップ「Monopoly」と立て続けにキャッチーな曲を連発し一気に引き込むと、アルバム後半はそれだけにとどまらず、Tame Impalaを思わせるネオサイケなサウンドメイキングの「Easily Confused」や、Mewのような哀愁漂うドリーミーオルタナロック「Make Me Want You」もあったりして、アルバム通じて飽きのこないバリエーションが豊富に用意されている。ベース・ドラムがガッシリ組まれていて、フワフワしたウワモノの音が四散せずに没入感の高いドリーミーワールドが展開されているところも好ポイントだ。
アルバムの最後の曲と最初の曲がコーラスのメロディでリンクしているところなど、よくあるギミックではありながらアルバムの構成もよく練られている。全体的に作り込みがしっかり行き届いた傑作デビューアルバムである。
今年はこうやって、まったくノーチェックだった新人アーティストの作品を不意に知ることが多く、聴いて感想を述べるのに極めて忙しいのだが、音楽好きとしては大変に幸せなことである。感謝。
評価:★★★★ 8/10


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