Fontaines D.C. / Romance(2024)

新譜

「Starburster」での変わりよう(音楽性でもファッションでも)で勝手に攻撃的なオルタナティブ・ロック路線への期待値が上がってしまっていたFontaines D.C.の4thアルバム。蓋を開けてみればオルタナティブというより柔軟なポップ路線への変化で、1stのトグロを巻くようなグルーヴや、2ndや3rdの荒涼として重苦しい80’sネオサイケな陶酔感が薄くなっており、正直なところ少し物足りなさを感じた。
しかしながら、全体を覆うゴス的な終末感だったり、ギターポップやシューゲイズ、グランジ、トリップホップなど、曲ごとによってアレンジが鮮やかに変わる、80’s〜90’sを基礎としたインディミュージック史の見本市のような内容は音楽ファンとしては純粋に楽しく感じる作品でもある。フィードバックノイズが火花を散らす強烈なディストーションギターのオーケストラ「Romance」で壮大に幕を開けると、グランジ/ヘヴィロックを彼らなりに解釈したようだが何故かトリップホップのようになっているユニークかつアグレッシブな「Starburster」や、ゴスポップな「Here’s the Thing」と、アッパーな新路線の曲を次々披露。続く「Desire」から「Bug」までの、シンプルにストリングスやアコギで味付けした歌を聞かせるタイプの曲が少しインパクト不足に聴こえるものの、メランコリアと浮遊感が増す「Motorcycle Boy」からの流れは秀逸で、特にギタリストのコナー・カーリーがリードVoを取ることで陶酔感のあるシューゲイズなハーモニーとサウンドを結実させた「Sundowner」は今作中一番のお気に入り。そして終盤は一気に視界が開けるような爽快さを持つジャングリーなギターポップ「Favourite」へと浮上してエンディング。
キーボードやストリングスなど使用楽器を増やしたところが上手くいっているところもあれば、そこまで強みを出せていないところもあり、まだ改良の余地がある作品という印象ではあるが、従前の完成された音楽性からポップ方面に脱皮するという難しいチャレンジには成功している。Amoeba出演時にも、ロックな風貌をして実はポップオタクだなと感じさせるチョイスをしていたので、この路線でさらなる音楽性の発展・成熟を期待したい。
評価:★★★☆ 7/10

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