年末からずっと2024年の新譜についてまとめていたので、ようやく腰を据えて過去作を掘り下げていけるなと思っていたら、新年早々の新譜連発で嬉しい悲鳴を上げることに。2010年ごろから10年間くらい音楽と少し距離を置いていたのでこの時期の音楽情報がスッポリ抜けていたりするのだが、それ故に最近は意外なアーティストの活動を再び知ることが増えている。今年も楽しい音楽ライフが過ごせそうだ。
ミキ姐さんが相変わらずで嬉しい。しかもこれは初期のLush感が漲ったメロディで、嬉しすぎる相変わらずさである。知らなかったんだけど、MooseのKJ・ムース・マキロップが旦那さんで最近は一緒に活動しているのだね。ちなみに4月にアルバムが出るとのこと。
昨年のアルバムがとても良かったノルウェーのYndling、次作のリードか、はたまた単発のシングルか分からないが、これまた素敵なドリーミーでシューゲイジングな北欧オルタナロックである。夢見心地さがグッと極まっていくアウトロの転調が秀逸である。
Tame ImpalaとKing Gizzard & the Lizard Wizardのせいですっかりサイケ大国と化した感のあるオーストラリアだが、そうこの人たちもいる。初期は美メロを聴かせていたこともあったがその後はガレージサイケやストーナー、ドゥームなどに接近したようで(とか語れるほどちゃんと聴いているわけではないが)、今作もグニャグニャにトグロを巻く大蛇のような邪悪さを帯びたカオティックなサウンドがアツい。MVもB級感のあるグロテスクさがイイ意味で悪趣味。アルバムに期待である。
いよいよアルバムリリースが近づいてきたウェールズのサイケポップバンド、相変わらずゴーキーズやスーファリの影がちらつく、ヒネリの効いたレトロなポップ感とウェールズのキノコが生えた森を思わせる摩訶不思議な音世界がイイ味出している。
アルバムだとアジア歌謡味が強いのに、単独のシングルだとネオソウル味が強くなるBubble Tea And Cigarettesである。メランコリックでメロウなメロディセンスが変わらず良い。いずれの路線も秀逸なので、両要素が上手いこと融合した作品も聴いてみたくなるこの頃である。
安定のジミのVoを聴かせたあとはアンディVo曲である。いつになくコブシを効かせる歌唱にウケながらも、この映画のようにドラマティックな哀愁はアルバムの期待感を高めてくれる。サウンドの奥行きとそれを支えるソウルなリズムのグルーヴも相変わらず職人的で良い。
ソニックブームとのコラボアルバムも記憶に新しいPanda Bearの純粋なソロ最新作が今月末にリリースされるのだが、ソロらしい私的な世界観ではなく開かれた華やかさがある。どうやらアルバムではAnimal Collectiveのメンバー総出でサポートしているのに加えて、インディ界隈で昨年話題だったCindy Leeとのコラボも含め、ソロとは思えない賑やな制作体制だったようだ。彼らしいポップな美メロにうっとりさせられる曲だが、AI生成と思われる不気味な顔面の七変化がバッドトリップのようなキモさを醸し出すMVは「FloriDada」に匹敵するキツめのインパクトを残す。この毒々しさも魅力の一つだ。
オルタナギターロックにガーリーなVoを合わせるという、初期のBeabadoobieを思わせる音楽性のバンドfromアトランタ。実験的な要素を取り入れているとYouTubeの紹介文にあるが、現状いちばんハネている「Passenger」以外は割とオーソドックスなソングライティングやアレンジだ。VoのMiyonの存在感があるので音はもっと攻めても良さそうに思うが、Beabadoobieのように音楽マニアではない一般層に向けた音楽性への未来も見える。どちらに進むのか、まとまった作品を聞いてみないとまだ分からない。
エレクトロ化したPinkshinyultrablast以上に初期のPinkshinyultrablast感のあるBlankenberge(読み方はブランケンベルヘなのかブランケンバーグなのかはたまたロシア語読みなのか今だに謎)。ジリジリとしたディストーションギターのテクスチャーに対して清らかなVoとメロディの組み合わせが心地よい。ロシア北西のサンクトペテルブルクは地理的にフィンランドに近いからか北欧感がある印象だ。
しかしながら、やっぱりロシアのバンドを紹介すると戦争のことが脳裏をよぎる。Blankenbergeのように活動を続けているバンドもいるいっぽうで、戦争の影響かはわからないが、前述のPinkshinyultrablastをはじめ動きが見られなくなっているバンドも見受けられる。極東の海洋国家に住んでいるいち音楽趣味者のミクロな視点としては早く平和裏に終結してほしいと切に願っているものだが、ユーラシア大陸の国家間の連鎖的な力学の中ではこの戦争は起こるべくして起こっており、なおかつ収拾がつかなくなっているというのも分かるので、難しい。
去年アウトテイク集を出していたが、今回は完全に新曲。地を這うような低空のグルーヴ感に渋みと哀愁に満ちたヴォーカル、ザラついたディストーションギター、そしてそこから立ち上るサイケデリア。変わらぬカッコ良さ。3月にはこの曲を含む4曲入りEPを出すようで、楽しみで仕方がない。
Downyも5枚目までは熱聴していたが、それ以降はご無沙汰というか自分が少し音楽から遠ざかっていてフォロー出来ていなかった。その間にギタリストが亡くなったりということもあったので心配していたが、研ぎ澄まされたカッコ良さに痺れた。硬派で破壊的なノイズギターと鬼気迫る青木ロビンのヴォーカル、そして初聴でノるのが難しいイビツな人力ブレイクビーツの破裂音に脳味噌をめちゃくちゃにされる。アルバムも3月に出るとのことで楽しみだ。
今月一番驚いた再会パターンがMogwaiのこの曲。私のMogwaiの記憶は2006年リリースの『Mr.Beast』で止まっていたので、約16年ぶりにMogwaiの新曲を聴き、「え、誰これ?」と隔世の感的なものにとらわれてしまった。YouTubeにオススメされてこの新曲を知ったのだが、チャンネル名が「MogwaiTV」というチャラいYouTuberがつけそうな名前になっていたので、ワンチャン「Mogwai TV」という別のバンドがいるのかもしれない、とすら疑ってしまった。その昔メタルバンドのMogg Wayと混同されていたこともあるしね。私がMogwaiの新譜を追わなくなってからも作品がコンスタントにリリースされていたようで、紆余曲折を経て最近はニューゲイズバンドのようなサウンドに辿り着いたのだろうが、ポストロックで静寂と轟音があってヴォーカルもほとんどなくて、PVも実験映画みたいで……というMogwai像がある自分にはやはり別のバンドを聴いているような心持ちは拭えず、コテコテにサビで盛り上がってくるポップさ加減に笑ってしまう。ただしサウンドは、ええ、これは好きなヤツです。ニューゲイズバンドみたいとはいえ、円熟した芸コマなサウンドの作り込みが味わい深い。既にリリースされているアルバムも聴き込み中。
Miki Berenyi Trio / 8th Deadly Sin
ミキ姐さんが相変わらずで嬉しい。しかもこれは初期のLush感が漲ったメロディで、嬉しすぎる相変わらずさである。知らなかったんだけど、MooseのKJ・ムース・マキロップが旦那さんで最近は一緒に活動しているのだね。ちなみに4月にアルバムが出るとのこと。
Yndling / It’s Almost Like You’re Here
昨年のアルバムがとても良かったノルウェーのYndling、次作のリードか、はたまた単発のシングルか分からないが、これまた素敵なドリーミーでシューゲイジングな北欧オルタナロックである。夢見心地さがグッと極まっていくアウトロの転調が秀逸である。
Psychedelic Porn Crumpets / March On For Pax Romana
Tame ImpalaとKing Gizzard & the Lizard Wizardのせいですっかりサイケ大国と化した感のあるオーストラリアだが、そうこの人たちもいる。初期は美メロを聴かせていたこともあったがその後はガレージサイケやストーナー、ドゥームなどに接近したようで(とか語れるほどちゃんと聴いているわけではないが)、今作もグニャグニャにトグロを巻く大蛇のような邪悪さを帯びたカオティックなサウンドがアツい。MVもB級感のあるグロテスクさがイイ意味で悪趣味。アルバムに期待である。
Melin Melyn / The Pigeon & The Golden Egg
いよいよアルバムリリースが近づいてきたウェールズのサイケポップバンド、相変わらずゴーキーズやスーファリの影がちらつく、ヒネリの効いたレトロなポップ感とウェールズのキノコが生えた森を思わせる摩訶不思議な音世界がイイ味出している。
Bubble Tea And Cigarettes / Lemongrass City
アルバムだとアジア歌謡味が強いのに、単独のシングルだとネオソウル味が強くなるBubble Tea And Cigarettesである。メランコリックでメロウなメロディセンスが変わらず良い。いずれの路線も秀逸なので、両要素が上手いこと融合した作品も聴いてみたくなるこの頃である。
Doves / Cold Dreaming
安定のジミのVoを聴かせたあとはアンディVo曲である。いつになくコブシを効かせる歌唱にウケながらも、この映画のようにドラマティックな哀愁はアルバムの期待感を高めてくれる。サウンドの奥行きとそれを支えるソウルなリズムのグルーヴも相変わらず職人的で良い。
Panda Bear / Ferry Lady
ソニックブームとのコラボアルバムも記憶に新しいPanda Bearの純粋なソロ最新作が今月末にリリースされるのだが、ソロらしい私的な世界観ではなく開かれた華やかさがある。どうやらアルバムではAnimal Collectiveのメンバー総出でサポートしているのに加えて、インディ界隈で昨年話題だったCindy Leeとのコラボも含め、ソロとは思えない賑やな制作体制だったようだ。彼らしいポップな美メロにうっとりさせられる曲だが、AI生成と思われる不気味な顔面の七変化がバッドトリップのようなキモさを醸し出すMVは「FloriDada」に匹敵するキツめのインパクトを残す。この毒々しさも魅力の一つだ。
Internet Island / Butterflies Make Me Sick
オルタナギターロックにガーリーなVoを合わせるという、初期のBeabadoobieを思わせる音楽性のバンドfromアトランタ。実験的な要素を取り入れているとYouTubeの紹介文にあるが、現状いちばんハネている「Passenger」以外は割とオーソドックスなソングライティングやアレンジだ。VoのMiyonの存在感があるので音はもっと攻めても良さそうに思うが、Beabadoobieのように音楽マニアではない一般層に向けた音楽性への未来も見える。どちらに進むのか、まとまった作品を聞いてみないとまだ分からない。
Blankenberge / Together
エレクトロ化したPinkshinyultrablast以上に初期のPinkshinyultrablast感のあるBlankenberge(読み方はブランケンベルヘなのかブランケンバーグなのかはたまたロシア語読みなのか今だに謎)。ジリジリとしたディストーションギターのテクスチャーに対して清らかなVoとメロディの組み合わせが心地よい。ロシア北西のサンクトペテルブルクは地理的にフィンランドに近いからか北欧感がある印象だ。
しかしながら、やっぱりロシアのバンドを紹介すると戦争のことが脳裏をよぎる。Blankenbergeのように活動を続けているバンドもいるいっぽうで、戦争の影響かはわからないが、前述のPinkshinyultrablastをはじめ動きが見られなくなっているバンドも見受けられる。極東の海洋国家に住んでいるいち音楽趣味者のミクロな視点としては早く平和裏に終結してほしいと切に願っているものだが、ユーラシア大陸の国家間の連鎖的な力学の中ではこの戦争は起こるべくして起こっており、なおかつ収拾がつかなくなっているというのも分かるので、難しい。
Swervedriver / Volume Control
去年アウトテイク集を出していたが、今回は完全に新曲。地を這うような低空のグルーヴ感に渋みと哀愁に満ちたヴォーカル、ザラついたディストーションギター、そしてそこから立ち上るサイケデリア。変わらぬカッコ良さ。3月にはこの曲を含む4曲入りEPを出すようで、楽しみで仕方がない。
Club8 / ○○○
今月の新曲は「まだやってたんだ!」という再会パターンが多いが、このClub8はなかなか驚いた。学生の頃にスウェディッシュポップにハマってClub8の初期作も聴き込んだが、それ以降はUKロックに夢中になったりスウェディッシュポップブームも下火になったりでご無沙汰だった。Spotifyで突然この曲がオススメでかかった時、なんだこのドリームポップ版Molchat Domaみたいな曲は、とびっくりして、Club8の曲と知ってさらにびっくりした次第。結構多作でずっと活動してたんですね。清涼感と哀愁を感じさせるメロディは相変わらずだが、ここ最近はポストパンクというかDoomer Musicというか、そういう音楽性に接近しているようだ。これは結構ユニークだと思う。
Downy / 日蝕
Downyも5枚目までは熱聴していたが、それ以降はご無沙汰というか自分が少し音楽から遠ざかっていてフォロー出来ていなかった。その間にギタリストが亡くなったりということもあったので心配していたが、研ぎ澄まされたカッコ良さに痺れた。硬派で破壊的なノイズギターと鬼気迫る青木ロビンのヴォーカル、そして初聴でノるのが難しいイビツな人力ブレイクビーツの破裂音に脳味噌をめちゃくちゃにされる。アルバムも3月に出るとのことで楽しみだ。
Mogwai / Fanzine Made Of Flesh
今月一番驚いた再会パターンがMogwaiのこの曲。私のMogwaiの記憶は2006年リリースの『Mr.Beast』で止まっていたので、約16年ぶりにMogwaiの新曲を聴き、「え、誰これ?」と隔世の感的なものにとらわれてしまった。YouTubeにオススメされてこの新曲を知ったのだが、チャンネル名が「MogwaiTV」というチャラいYouTuberがつけそうな名前になっていたので、ワンチャン「Mogwai TV」という別のバンドがいるのかもしれない、とすら疑ってしまった。その昔メタルバンドのMogg Wayと混同されていたこともあるしね。私がMogwaiの新譜を追わなくなってからも作品がコンスタントにリリースされていたようで、紆余曲折を経て最近はニューゲイズバンドのようなサウンドに辿り着いたのだろうが、ポストロックで静寂と轟音があってヴォーカルもほとんどなくて、PVも実験映画みたいで……というMogwai像がある自分にはやはり別のバンドを聴いているような心持ちは拭えず、コテコテにサビで盛り上がってくるポップさ加減に笑ってしまう。ただしサウンドは、ええ、これは好きなヤツです。ニューゲイズバンドみたいとはいえ、円熟した芸コマなサウンドの作り込みが味わい深い。既にリリースされているアルバムも聴き込み中。
コメント