Tops / I Feel Alive(2020)

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カナダ・モントリオールのバンドTOPSの4thアルバムである。このバンドのことは全然知らなかったのだが、Margo Guryanの名曲「Sunday Morning」のカバーで知り、以来すっかりハマってしまった。以前はローファイな音を志向していたようだが、このアルバムではシャッキリと立ち上がったサウンドテクスチャーとダンサブルなビート、そこに哀愁のメロディが芳醇に香りたつ、より開かれた、そして最もポップな内容となっている。
全体的に、80’sなダンスポップやシンセポップがベースにありつつも、リバーブの効いたウィスパーなヴォーカルを併せ持つ音楽性はシティポップ+ドリームポップ的な印象だ。もしくはソフィスティポップとソフトロックの邂逅と言っても良いかもしれない。絶妙に切なく寂しげな表情を見せるメロディや、美しいコーラスのハーモニー、ロマンチックで洒脱なギター、こういった要素にはPrefab Sproutの名盤『Steve McQueen』を彷彿とさせるニュアンスもある。80’sポップスはどうしてもチャラチャラしたバブリー感やギラギラしたドギツさを持つものだが、そういったエグみはしっかり払い落とされて、ロマンチックでやわらかなインディポップに仕上げられているのも実に良い。

アルバムは、開幕の「Direct Sunlight」から華やかなフルートの音色に爽やかなコーラスのメロディを披露すると、開放感のあるラブソング「I Feel Alive」、ダンサブルなリズムと切ないギターフレーズが印象的な「Pirouette」と立て続けにフックの効いた曲を連発。「Ballads & Sad Movie」などのスローなバラード曲もあるがあまり長く引っ張らずに箸休め的な尺に留めており、すぐに都会的な80’sポップ「Colder & Closer」や「Witching Hour」に小気味良く戻っていく。中盤最も耳を引く「Drowning In Paradise」は、タイトルといいフランスの恋愛映画を思わせるセリフといい、非常にロマンチックでありながらしっかりと踊らせてくれる、このアルバムのハイライトの一つ。終盤に至ってもテンポの良さは継続し、「Ok Fine Whatever」で切なさが極まるものの、大袈裟なバラードなどのクライマックスには到達せずにそのままの勢いであっという間に駆け抜け、最終曲「Too Much」でメロウに終了。この作りを物足りなく感じる向きもあるかもしれないが、個人的には重みのない軽快な聴き味が好ましく、気軽にプレイボタンを押させてくれる傑作だと思っている。
それにしても、Voジェーン・ペニーの変幻自在な声色はインディポップ離れした表現力があり、魅力的だ。パフォーマンスも含めて、80’sくらいまでにあった映画スターやポップ歌手の婀娜っぽさを感じる。ソロ作も出しているようなので、そちらも楽しんでいきたい。

評価:★★★★ 8/10

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