世界各国のインディ、メジャーが入り乱れる今月のシングルレビュー。日本国内には自分が興味を持てる音楽があまり無い代わりに、日本以外では好みの音楽が大豊作で、幸福感に包まれております。一方、深刻な聴く時間不足も……。
ジャズをブレンドした創造性に富んだアレンジとアンサンブル、確かなグルーヴと途中で飛び出すサイケデリックなギター。一瞬で台北の夜市にトリップさせられる独自の音世界を創造し続ける台湾のDeca Joinsの新曲。近年のバンド界隈はシンセや打ち込みなどエレクトロな方面に流れがちだが、オーセンティックなギターバンドの構成でここまで個性を強めているのは素晴らしい才能だと思う。7月に引き続きのシングルリリースということは、そろそろアルバムが出るのだろうか。
K-Indieの人ということ以外一切素性のわからない、たぶんシンガーソングライターなんだろうけどワンチャンバンドなのかもしれないheegyuの新曲。韓国語詞が分からないので今のところは捻りの効いた爽やかで切ないメロディと歌声が良いよね、と言う点で気になりSpotifyでフォローしていた。
韓国の歌手はソフト&クールな歌い口がトレンドのようで、ややもすると「のど自慢」的に喉を振り絞って歌い上げてクドくなってしまう日本の歌手より、自分のような趣味のものは韓国の歌手のほうが好みで、メジャーのK-Popはそれでもかなり通俗的である反面、インディのアーティストは真摯で洗練されており、注目している次第だ。
何はともあれ、現状では全く素性がしれないので、もっとプロフィールか出回って欲しい。過去に出している曲もイイのでそちらもオススメ。
タイの突然変異系オルタナインディバンド、Soft Pineの新曲。シカゴ音響派あたりがベースにある感じはするものの、奇妙なアレンジと中毒的なアンサンブルがサイケ的効能をも醸し出しており、さらにそこに南国タイのバイブスもしっかりと詰め込まれているところが、Yonlapa同様お気に入りだ。文化的な好奇心やトリップ感を求めて海外の音楽を聴いているので、欧米の音楽そのままというよりかは、その国独自の要素が感じられるほうがやっぱり嬉しい。
来週リリースされる新EP『Velvet Petals』からの新曲。タイのインディシーンに注目するきっかけになったバンドで昔から応援しているのだが、日本にも来てくれるようになったのにライブを観に行けてなかったり、傑作デビューアルバムも2023の年間ベストに選んだだけでちゃんとレビュー書いてないしで、不義理なこと夥しい。新EPリリースを機に、せめてレビューだけはちゃんと書き残しておきたいところ。
去年のデビューアルバム『Lighthouse』が傑作だったルクセンブルク出身Francis of Deliriumの新曲。アルバムは少女のジュブナイル的青春の一瞬が煌めいた、もうその時にしか出せない系の魔法がかかった繊細な作品だったが、例えば日本人向けに言えばチャットモンチーが典型だが、得てして次の作品でその魔法が失われ、魅力が半減してしまうといったことも起こりがちだ。リスナー歴も長くなってくると、デビューと同時に成功したアーティストに対しては期待よりもその後陥りがちな「ソフォモア・スランプ」のほうを心配してしまいがちで自分でもなんだかなぁと思ったりするが、数回同じパターンを見ると“学習”してしまうのがケモノの性で、困ったものである。Francis of Deliriumはどうだろうか、このアルバムより前の初期作で聴けたような力強いロック・サウンドではまだその判断はつきかねるのだが、自作を楽しみに待ちたい。
2023年結成のド新人バンドながら、去年リリースしたデビューアルバム『The Comfort in Being Sad』が傑作で個人的にも凄いハマったLA拠点のThe Treedomeの新曲。残暑を思わす気だるいレゲエのリズムと哀愁のメロディも、Voガビ・エルナンデスによるおっとりとした声が乗ると涼しげに聴こえるから不思議だ。そしてゲストヴォーカルのRudy De Andaという人は知らなかったのだが、彼のアルバムを聴いてみたところ奇天烈なラテンサイケポップでこれまた興味津々。ただでさえ聴きたい音楽が聴ききれていないのに、本当に困ってしまう。
ソウルやフュージョンをミックスした甘美なメロディ&コード進行、疾走感のあるスピーディーな曲展開に、時折見せる任天堂ゲームサントラ的ノスタルジアに魅了される、ベーシストThundercatのひさしぶりの新曲。相変わらずファンキーでエキセントリックなファッションとMVも微笑ましい(妻にはキモいと言われてしまったが)。気合いの入ったRemi Wolfとのコラボ曲「Children of the Baked Potato」も同時リリースされているのを見るに、これは新譜を期待してもよろしいかな?
今まであまりハマれずに来ながらも、うっすら気になり続けていたDry Cleaning、歌詞が面白いと言うことを知ってようやくグッと来始めたところに届いた新曲は、来年1月リリースのアルバムからのリードシングル。イギリスのロックバンドの歌詞は文学的過ぎたりイギリス国内の事情に詳しくないとイマイチピンと来なかったりすることも多いのだが、Dry Cleaningは平易な言葉を用いた聴き取りやすい歌詞で非ネイティブにも面白みが分かりやすくて良い(そして日本語訳付きのMVまで用意していただける接待ぶりに感謝)。ユーモアの効いた皮肉が、かったるそうなファンクのリズムに乗っかるこの味わいにジワジワくる。
相変わらず繊細なヴォーカルと対比される歪なデジタルサウンドとMVの肉体の蠢きが強烈なTwigsさんの新曲。最後の宮崎駿が怒り出しそうなグロテスクな肉体崩壊の表現は「美」の解体か、はたまた転生か。とかなんとかカッコつけて考えてたら、この曲、『Eusexsua』に入らなかった曲と思いきや、その続編にして残照となる新譜『Eusexua Afterglow』のリードシングルとか。タイトルは近年流行りのデラックス版商法っぽいがそうではなく、ガチの新譜らしい。嬉しいんですけど、ちょっと今年は新譜の供給量がヤバい。Men I Trust、Psychedelic Porn Crumpets、Vinyl Williamsが年2枚ペースなだけでも追いつかないのに、いままでずっと寡作だったTwigsさんまで同年2枚リリースとは。「精神と時の部屋」があったらいいのに。
こちらは多分純粋にアルバムに入らなかった曲(ですよね…?)。ギターの煌めく残響音が非常にMoose感がありつつミキ姐さんの元気なヴォーカルも楽しめる、一人一人の個性が出た良い曲。確かにアルバムには入れどころなさそうだけど、1曲のなかで色々な景色が詰め込まれているので、単体でも聞き応えのある曲だ。
最後は待望のフルレングス1stアルバムが来年の1月にリリース決定したXG。アルバムからの1stシングル「GALA」は相変わらずクールな疾走感と中毒的なフックが盛りだくさんのこだわり尽くした上質なダンスポップで、いつもながら細部に注意を凝らして制作されているのがよく分かる。所詮は商業主義的・アイドル的なガールズグループ、ダンスポップとして片づけられがちなこのジャンルで、ここまでこだわったつくりをしているのは驚異的だ。短期間で消費されてポイ捨てされる純粋な商業音楽になることを拒むかのように、キャッチー過ぎずかといって地味すぎない絶妙なバランスに抑制されたフックやメロディは心地よいイヤーワーム現象を産むし、単なる歌の伴奏ではない聴くたびに新しい発見のある職人肌のサウンドや、クラブで爆音で聴きたくなる身体を動かされるグルーヴィなリズムもカッコイイ。そして、そんな完成された曲を、パフォーマーであるメンバーの個性的な歌やラップにより120%の領域にまで完成度が高められている。これらの集合体であるXGの曲は、東映の特撮モノのようなMVやファッション、もはや創作ダンスのようなカッコいいダンスのコレオグラフィとの視覚的な相乗効果もあり何度聴いても飽きることがない。アルバム脳のリスナーなんであんまりシングルの段階で聞き飽きてしまいたくないのだけど、あの瞬間この瞬間を聴きたくなって再び再生ボタンを押してしまう。まさにこれこそ優れたポップミュージックが持ち得る要素。とりあえずは、マクドナルドを食しながら次の曲を楽しみに待ちたい。
Deca Joins – 我不用問
ジャズをブレンドした創造性に富んだアレンジとアンサンブル、確かなグルーヴと途中で飛び出すサイケデリックなギター。一瞬で台北の夜市にトリップさせられる独自の音世界を創造し続ける台湾のDeca Joinsの新曲。近年のバンド界隈はシンセや打ち込みなどエレクトロな方面に流れがちだが、オーセンティックなギターバンドの構成でここまで個性を強めているのは素晴らしい才能だと思う。7月に引き続きのシングルリリースということは、そろそろアルバムが出るのだろうか。
Heegyu – No Pass, Yes Love
K-Indieの人ということ以外一切素性のわからない、たぶんシンガーソングライターなんだろうけどワンチャンバンドなのかもしれないheegyuの新曲。韓国語詞が分からないので今のところは捻りの効いた爽やかで切ないメロディと歌声が良いよね、と言う点で気になりSpotifyでフォローしていた。
韓国の歌手はソフト&クールな歌い口がトレンドのようで、ややもすると「のど自慢」的に喉を振り絞って歌い上げてクドくなってしまう日本の歌手より、自分のような趣味のものは韓国の歌手のほうが好みで、メジャーのK-Popはそれでもかなり通俗的である反面、インディのアーティストは真摯で洗練されており、注目している次第だ。
何はともあれ、現状では全く素性がしれないので、もっとプロフィールか出回って欲しい。過去に出している曲もイイのでそちらもオススメ。
Soft Pine – Forestictronic
タイの突然変異系オルタナインディバンド、Soft Pineの新曲。シカゴ音響派あたりがベースにある感じはするものの、奇妙なアレンジと中毒的なアンサンブルがサイケ的効能をも醸し出しており、さらにそこに南国タイのバイブスもしっかりと詰め込まれているところが、Yonlapa同様お気に入りだ。文化的な好奇心やトリップ感を求めて海外の音楽を聴いているので、欧米の音楽そのままというよりかは、その国独自の要素が感じられるほうがやっぱり嬉しい。
YONLAPA – Little Faster
来週リリースされる新EP『Velvet Petals』からの新曲。タイのインディシーンに注目するきっかけになったバンドで昔から応援しているのだが、日本にも来てくれるようになったのにライブを観に行けてなかったり、傑作デビューアルバムも2023の年間ベストに選んだだけでちゃんとレビュー書いてないしで、不義理なこと夥しい。新EPリリースを機に、せめてレビューだけはちゃんと書き残しておきたいところ。
Francis of Delirium – Little Black Dress
去年のデビューアルバム『Lighthouse』が傑作だったルクセンブルク出身Francis of Deliriumの新曲。アルバムは少女のジュブナイル的青春の一瞬が煌めいた、もうその時にしか出せない系の魔法がかかった繊細な作品だったが、例えば日本人向けに言えばチャットモンチーが典型だが、得てして次の作品でその魔法が失われ、魅力が半減してしまうといったことも起こりがちだ。リスナー歴も長くなってくると、デビューと同時に成功したアーティストに対しては期待よりもその後陥りがちな「ソフォモア・スランプ」のほうを心配してしまいがちで自分でもなんだかなぁと思ったりするが、数回同じパターンを見ると“学習”してしまうのがケモノの性で、困ったものである。Francis of Deliriumはどうだろうか、このアルバムより前の初期作で聴けたような力強いロック・サウンドではまだその判断はつきかねるのだが、自作を楽しみに待ちたい。
The Treedome – True Lover
2023年結成のド新人バンドながら、去年リリースしたデビューアルバム『The Comfort in Being Sad』が傑作で個人的にも凄いハマったLA拠点のThe Treedomeの新曲。残暑を思わす気だるいレゲエのリズムと哀愁のメロディも、Voガビ・エルナンデスによるおっとりとした声が乗ると涼しげに聴こえるから不思議だ。そしてゲストヴォーカルのRudy De Andaという人は知らなかったのだが、彼のアルバムを聴いてみたところ奇天烈なラテンサイケポップでこれまた興味津々。ただでさえ聴きたい音楽が聴ききれていないのに、本当に困ってしまう。
Thundercat – I Wish I Didn’t Waste Your Time
ソウルやフュージョンをミックスした甘美なメロディ&コード進行、疾走感のあるスピーディーな曲展開に、時折見せる任天堂ゲームサントラ的ノスタルジアに魅了される、ベーシストThundercatのひさしぶりの新曲。相変わらずファンキーでエキセントリックなファッションとMVも微笑ましい(妻にはキモいと言われてしまったが)。気合いの入ったRemi Wolfとのコラボ曲「Children of the Baked Potato」も同時リリースされているのを見るに、これは新譜を期待してもよろしいかな?
Dry Cleaning – Hit My Head All Day
今まであまりハマれずに来ながらも、うっすら気になり続けていたDry Cleaning、歌詞が面白いと言うことを知ってようやくグッと来始めたところに届いた新曲は、来年1月リリースのアルバムからのリードシングル。イギリスのロックバンドの歌詞は文学的過ぎたりイギリス国内の事情に詳しくないとイマイチピンと来なかったりすることも多いのだが、Dry Cleaningは平易な言葉を用いた聴き取りやすい歌詞で非ネイティブにも面白みが分かりやすくて良い(そして日本語訳付きのMVまで用意していただける接待ぶりに感謝)。ユーモアの効いた皮肉が、かったるそうなファンクのリズムに乗っかるこの味わいにジワジワくる。
FKA Twigs – Cheap Hotel
相変わらず繊細なヴォーカルと対比される歪なデジタルサウンドとMVの肉体の蠢きが強烈なTwigsさんの新曲。最後の宮崎駿が怒り出しそうなグロテスクな肉体崩壊の表現は「美」の解体か、はたまた転生か。とかなんとかカッコつけて考えてたら、この曲、『Eusexsua』に入らなかった曲と思いきや、その続編にして残照となる新譜『Eusexua Afterglow』のリードシングルとか。タイトルは近年流行りのデラックス版商法っぽいがそうではなく、ガチの新譜らしい。嬉しいんですけど、ちょっと今年は新譜の供給量がヤバい。Men I Trust、Psychedelic Porn Crumpets、Vinyl Williamsが年2枚ペースなだけでも追いつかないのに、いままでずっと寡作だったTwigsさんまで同年2枚リリースとは。「精神と時の部屋」があったらいいのに。
Miki Berenyi Trio – Doldrum Days
こちらは多分純粋にアルバムに入らなかった曲(ですよね…?)。ギターの煌めく残響音が非常にMoose感がありつつミキ姐さんの元気なヴォーカルも楽しめる、一人一人の個性が出た良い曲。確かにアルバムには入れどころなさそうだけど、1曲のなかで色々な景色が詰め込まれているので、単体でも聞き応えのある曲だ。
XG – GALA
最後は待望のフルレングス1stアルバムが来年の1月にリリース決定したXG。アルバムからの1stシングル「GALA」は相変わらずクールな疾走感と中毒的なフックが盛りだくさんのこだわり尽くした上質なダンスポップで、いつもながら細部に注意を凝らして制作されているのがよく分かる。所詮は商業主義的・アイドル的なガールズグループ、ダンスポップとして片づけられがちなこのジャンルで、ここまでこだわったつくりをしているのは驚異的だ。短期間で消費されてポイ捨てされる純粋な商業音楽になることを拒むかのように、キャッチー過ぎずかといって地味すぎない絶妙なバランスに抑制されたフックやメロディは心地よいイヤーワーム現象を産むし、単なる歌の伴奏ではない聴くたびに新しい発見のある職人肌のサウンドや、クラブで爆音で聴きたくなる身体を動かされるグルーヴィなリズムもカッコイイ。そして、そんな完成された曲を、パフォーマーであるメンバーの個性的な歌やラップにより120%の領域にまで完成度が高められている。これらの集合体であるXGの曲は、東映の特撮モノのようなMVやファッション、もはや創作ダンスのようなカッコいいダンスのコレオグラフィとの視覚的な相乗効果もあり何度聴いても飽きることがない。アルバム脳のリスナーなんであんまりシングルの段階で聞き飽きてしまいたくないのだけど、あの瞬間この瞬間を聴きたくなって再び再生ボタンを押してしまう。まさにこれこそ優れたポップミュージックが持ち得る要素。とりあえずは、マクドナルドを食しながら次の曲を楽しみに待ちたい。