Men I Trsut – Equus Caballus(2025)

新譜
新譜

 4年ぶりの新譜リリースだと喜んだのも束の間、しっかり4年分の新曲が溜め込まれていたようで、前作『Equus Asinus』からたった2ヶ月で、双子作品となる『Equus Caballus』がリリースされた。前作は、アコースティック、フォーク、メランコリアを追求した内容で「ロバ」を名乗っていたが、「ウマ」を名乗る本作は、今までのMen I Trustのイメージとは異なるロックバンドらしいサウンドを探究したアップテンポな内容となっている。そんなことを言うとエネルギッシュな内容をイメージしてしまうかもしれないが、アルバムのつくりとしては淡白な印象で、1枚通した物語的な流れはあまり意識されていない。盛り上がったり溜めを作ったりすることもなく、一定のテンポでさくさくと進んでいく上、似たような曲も多いので、正直に言えばロバ版に入れられなかったタイプの曲を淡々と並べている印象すら受ける。しかし、これが欠点とまではなっておらず、不思議とスルスルと聴けてなかなか飽きが来ない。曲ごとに、歌だったり、ギターのアルペジオだったり、シンセだったり、耳に残るフックが散りばめられていて、ノりながら聴いているといつの間にか最後のアウトロ「Eris(Wait)」に到達しているという感じで、終始心地よい感じなのである。この聴き味の良さが本作の魅力だと思う。

 アルバム前半は割と抑えめの展開で、レトロな80’sシンセが懐かしい「To Easy You」に始まり、ピッチの揺らぎがほんのりとサイケデリアを帯びる切ない「Hard To See」まではノスタルジアの霧の中に包まれる。ソフトにファンキーなベースが引っ張るMen I Trustらしい4曲目「Ring Of Past」から徐々にスピード感が増していき、先行シングル「Husk」以降はいよいよギターが曲の前面に出てきて、今まであまり彼らがやってこなかった80’sインディギターロック的なサウンドへとバトンタッチ。The Smithsを思わせるギターアルペジオが耳に残る「Where I Sit」、ポップス界隈でよく聴くコード進行ながら、絶妙に枯れた感じのギターポップ&シンセポップのアレンジが切ない余韻を残す「In My Years」、直線的で前のめりなポストパンク調のリズムで加速していく「Billie Toppy」、さらに過去最速レベルのBPMで、歌詞では皮肉にも身を滅ぼす過剰さへの警句をクールに歌う「Worn Down」と軽快な足取りで駆け抜けていく。クライマックス感がないので、先ほども書いた最後の短いアウトロ「Eris(Wait)」に至ると「あれっ、もう終わり?」という感じになるが、心地よい風とスピード感を楽しみながらあっという間に目的地に到着する、まさに「ウマ」に乗っているかのような快適な音の旅である。

 何度聴いても、特に緊張感や高揚感もないままにアルバム1枚聴かせてくるのが不思議な感じだが、エナジーを詰め込んだドラマティックなアルバムは引き込まれて興奮する分、映画を見終わった後のような疲労感も伴うものだ。ここまで軽やかに快感が持続していると、聴き疲れる感じはなく、気軽に何度でも楽しめる。チルな音楽を作り続けてきた彼らなりのアッパーな表現、なかなか興味深い作品である。
評価:★★★☆ 7/10