LUCA & There is a fox – Dancers(2025)

新譜
新譜

 アメリカ生まれ・日本拠点のLuca Delphiと、京都生まれ・カナダ育ち・アメリカ拠点のThere is a fox、北米に縁を持つ日本人シンガーソングライター2人によるフォークユニットの3作目。
 本作は“ネオフォーク”と紹介されているのだが、フォークと名のつくジャンルは、ネオフォークとかフリーフォークとかアヴァンフォークとか色々あるけれども実際何がどう違うのかよく分からなかったりする。個人的にはスロウコアとか、朝の光のような煌めくサウンドに陽性のサイケデリアも感じられるためアシッドフォークやネオサイケデリアといった捉え方も可能なのでは? とか聴きながら考えたりしていたが、自然派な世界観が描かれたフォーク作品であることに変わりはないので、今なら青葉市子との類似性を見たほうが無難そうである。ただ、ジブリ的な神秘性や幻想的な夢見心地感がある青葉市子と比べると本作はもう少し日常の手触り感があり、音数も結構詰め込まれている。なので、リラックスして微睡んでいくようなダウナーさはなく、寝ぼけた頭を目覚めさせていくような覚醒感が爽やかだ。朝聴くととても気持ちが良い作品に仕上がっている。

 曲を具体的に見ていくと、基本的には、冒頭「Silver Moon」に象徴されるような、ポストロック以降の幻想的で叙情的な音響空間をバックに、美しいアコギのアルペジオと、There is a foxとLuca Delphiのシューゲイズヴォーカルのような心地よいオクターブユニゾンを聴かせる作りが特徴的だ。英語詞と日本語詞の曲が両方入っているが、空気感やテクスチャーを大事にした洋楽標準の美しいサウンドにソフトな歌唱法による日本語詞が乗っかっているのがなかなか貴重で、切ないメロディと雄大な自然の情景が浮かぶ「Utau Kujira」は特に好きな曲だ。また、昭和のヒット曲「見上げてごらん夜の星を」の幻想的なカバーも素晴らしく、日本人の郷愁を呼び起こす普遍的な楽曲の強さが浮き彫りになっている。空間系のウワモノのサウンドがヴェールのように全体を覆っているところも2人の繊細なヴォーカルが紡ぎ出す世界と実によく合っていて、ゲスト・ギタリストの山内弘太によるものと思われる、エフェクターを効かせたアトモスフェリックなエレキギターのサウンドが特に秀逸だ。清冽な小川の流れのような2人の美しいハーモニーが聴ける「Reset」や、LUCAの抽象的なヴォーカルがひときわドリーミーでうっとりさせる「Dancers」の世界に、陶酔感や浮遊感をもたらすサイケデリアをまとわせているのが素晴らしい。

 フォークというジャンルに留まらない、奥行きのある味わい深い良作である。

評価:★★★★ 8/10