Downy – 無題(2025)

新譜
新譜

 Downyの新譜を聴くのは2013年リリースの5thアルバム以来10年以上ぶりで、その間にもアルバム2枚、青木ロビンのzezecoと色々活動していたことも知らなかった。ちょうどこの時期、自分はあまり積極的に音楽を聴いていなかったからそうなってしまったのだが、この鬼気迫る本作を聴いてもったいないことをしたと思った。日本のロックシーンも00年代くらいまではオルタナティブな音楽性が広がっていくかに思えていたのだが、結局アニソンやドラマ主題歌などのタイアップを狙うポップ路線に収束してしまい、90年代のカラオケブームの時代と大差ない状況となり今に至るが、その間もずっとこの壮絶なまでに尖った音楽を創造してい続けていたのだから驚かされる。

 ポストロック、ノイズ、ダブ、オルタナギターロックといったジャンルを高密度に圧縮して、それを高速マスマティック人力ブレイクビーツの上に搭載した刺激的なサウンドは、8作目にもなる本作でも未だ健在である。3拍のリズムが入れ子構造のように重なる奇っ怪なリズムと耳をつんざくノイズが襲い掛かる「日蝕」、夜のビル街をさまようような浮遊感のあるサウンドでアルバム世界への没入感を高めてくれる「剥離の窓」、未だに拍の取り方がよく分からないが(それはDownyの曲にはよくあることだが)それでもギクシャクと踊らされる(それもよくある)「foundyou」と、冒頭からDowny節全開の展開に、苦笑いに近い歓喜の笑みを浮かべてしまう。ノイズギターやヴォーカルにより、本能の奥底から高揚感を煽りに煽ってくるにも関わらず、簡単にはノらせない複雑怪奇なリズムで湧き上がる高揚感を押さえつけてくるのがDownyの得意技で、出口を塞がれて発散していかない興奮が、体の中に蓄積して爆発しそうになるこの感じがたまらない。さらにアルバムの高揚感は中盤に至り高まっていき、ビターなテンションコードのギターストロークが空虚さと冷たさを演出する「Night Crowlin’」が心に沁みた後は、緊急地震速報のような不穏なサウンドが背後に鳴っている混沌そのもののような「断層ジャズ」に圧倒され、そうかと思えば耳障りなシンセの尖った音がひたすら焦燥感を煽ってくる「枯渇」で気が狂ったように踊らされる。歌い上げる青木ロビンのヴォーカルと反復するいびつなリズムの取り合わせがカッコいい「Edge_Swing」でようやくクライマックスに到達し、最後の「叢雨」(CD版はこの後さらに2曲あるようだが、未聴である)まで、充実のDownyワールドにどっぷりと浸かることが出来る47分間である。

 相変わらずの、乱反射する光と暴風荒れ狂う音世界、そのなかに屹立する青木ロビンの圧倒的絶唱マントラに打ちのめされて言葉が出なくなるが、冷静になって考えると、昨今は打ち込みでいかようにも出来るところ、この複雑怪奇なサウンドをしっかり人力で再現し、まるで生物のような生々しさを与えていることにDownyの素晴らしさがある。この混沌とした狂気的なグルーヴは、人の手でなければ作り出せない。最初こそ、アルバムのアートワークがDownyらしからぬ今風の漫画イラストであれっ?と思ったが、聴いてみれば実にDownyな素晴らしい内容であった。

評価:★★★★ 8.0 / 10