Phoebe Rings – Aseurai(2025)

新譜
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 デビューEP『Phoebe Rings』が素晴らしい内容だったため、非常に楽しみにしていたニュージーランドのPhoebe Ringsのファーストフルアルバム。Phoebe Ringsはもともとヴォーカルのクリスタル・チョイのソロプロジェクトだったこともあり、前作はクリスタル・チョイの個性が色濃く出ていたように感じるが、本作は他メンバーが作曲したり歌ったりしている曲もあり、ソングライター with バックバンド的な音作りから、よりバンドとしての一体感が増している。ベーシストのベン・ロックが意外にも艶やかなヴォーカルを聴かせるメロウディスコ「Get Up」や、ギタリストのシメオン・カヴァナー・ヴィンセント作曲によるソウルのグルーヴと哀愁漂うメロディを聴かせる「Drifting」などが特に印象的で、バンドの成長を感じさせてくれる。もちろんクリスタル・チョイの歌も、リードシングルにしてアルバムの主題となる韓国語詞の「Aseurai」(調べても良く意味の分からない言葉だったのだが、バンドによると「大気圏に取り囲まれ、手の届かない、消えゆく」という意味だそう)などでしっかり堪能でき、全体的にジャズやソウルをベースとしつつもクリスタル・チョイのルーツであるアジアン・ポップスのバックボーンが滲み出た、シティポップ感のある作風に仕上がっている。

 一方で、EPに満ちていたキラキラしたドリーミーさやスペーシーさは大幅に減少。ジャズ・ソウルに影響を受けたインディポップバンド、という世界的にも割と多いタイプの音楽性へ接近していて、個人的にはちょっと新鮮味や面白みに欠けるという印象を受けてしまった。メロディが抑制的になったこともその印象に影響していそうで、メロディックで耳を引き付ける「Blue Butterfly」が1分21秒で終わってしまう前奏曲的な小曲であることも、本作の方向性が自分が期待していたものとは少し違っていたことの象徴になっている。主に韓国や日本のメロディックなポップス感と、ドリーミーなシンセサウンドがこのバンドの最大の強みだと思っていたので、そこが控えめになってしまったことは残念だ。

 とはいえ、まったくつまらない曲というのもほとんどなく、客観的に見ると各曲クオリティは高いので、もう少し派手目なシングル曲が入っていれば印象が変わったかも、という気もするし、自分のようにシティポ系の音楽をあまり聴き漁っていない人にとっては新鮮に楽しめる作品かもしれない。

評価:★★★+ 6.5/10