Yndling – Time Time Time (I’m in the Palm of Your Hand)(2025)

新譜
新譜

 ノルウェーのドリームポッププロジェクト、Yndlingの2ndアルバム。2024年の1stフルアルバム『Mood Booster』は非常に気に入って2024年間Top20にも選んだのだが、その翌年に早くも新作リリースというアツい展開。その勢いはサウンドにも表れていて、奥深いドリーミーなポップワールドにじっくり引き込んでいくような作りだった1stとは異なり、全体的にアグレッシブでオープンな雰囲気の曲が多くなっている。
 また本作は前半・後半をパート1、パート2として分ける2部構成のアルバムとして制作され、Spotifyなどでもパート1となるアルバム前半5曲がEPとして先行してリリースされていた。この構成には、純度の高いドリームポップアルバムだった前作から音楽性を拡張するべく、パート1ではシューゲイズを、パート2ではトリップホップをそれぞれ探求し、そのコントラストを強調するためという目的があったようだ。そのためアルバム1枚通した物語的な流れや世界観のようなものは薄くなっており、どこかシングル集のような趣も漂うが、それぞれのパートでの音楽的な挑戦は見事に実を結び、Yndlingの音楽性に新たな魅力を加えることに成功している。

 パート1では、北欧ポップのメロディ+シューゲイズの浮遊感+オルタナティブ・ロックのスケール感、といった感じのドラマティックな曲が立て続けに収められていて、前作でもMewを彷彿とさせるような曲が少し入っていたが、その路線を押し進めた感じで、これは素晴らしいと言う他ない。開幕の前奏曲となる「Hold On To a Feeling」からサイケデリックな浮遊感に包まれて期待感を高めてくれるが、Cocteau Twins風の美しいコーラスワークと瑞々しいサウンドがたまらない「Even If It’s a Lie(I Don’t Mind)」で一気に引き込まれ、ドラマティックで壮大なポップロック「It’s Almost Like You’re Here」の感動的なアウトロに打ちのめされ、最もシューゲイズの要素が濃い「As Fast As I Can」では広大なギターアンビエンスと音圧強めのバンドアンサンブルを聴かせてくれる。前半は大満足の内容だ。
 パート2では、トリップホップ、といってもブリストル・サウンドのようにダウナー&ダークなものではなく、ドット・アリソンのいたOne Doveのようなグループに近い、よりクラブテクノ寄りのビートが搭載された華やかなサウンドが展開されている。「Fences」は従来路線の哀愁の欧州ロマンただようドリームポップだが、それ以外はメロディよりもビートや浮遊感のある音を楽しむ感じの曲になっていて、特にアタック感強めのビートがしっかり効いていてダンサブルな「You Know I Hate It (How The Worlds Moves On)」や、機械的なリズムととろけるようなシリエのヴォーカルが混ざり合いながらループする「Falling Behind」なんかはとても気持ち良い。

 個人的にはやっぱり前半のシューゲイズパートのほうが好みだし、彼女の強みであるメロディが存分に活かされていると思うのだが、リズム主導のダンサブルでトランシーなサウンドでも十分楽しませることが出来ることを証明したのも、今作における音楽的チャレンジのよい成果であると思う。完成度では前作には及ばないものの、良曲ぞろいの力作であると思う。

 ちなみにアーティスト名「Yndling」の発音について、私はノルウェー語発音のdが聴こえなかったので「インリン」と呼んでいたのが、最近出たアーティスト名の発音を説明するショート動画では「インドリン」と英語読みしていたので、こちらのほうが世界標準となりそう。ただ日本ではバンド名や地名などを、英語の発音とは違う読み方で国内流通させる前例があるので、もしYndlingが日本盤発売となった暁には、日本の流通業者がどのような読みを選ぶのか注目である。なので早く日本盤とかリリースして日本でもプロモーション活動(つまりライブ)に来てくれるようになると良いなと思う。

評価:★★★☆+ 7.5/10