Psychedelic Porn Crumpets – Carpe Diem, Moonman(2025)

新譜
新譜

 サイケデリック・ロックの聖地と化したオーストリア西部の街パース拠点のサイケロックバンド、Psychedelic Porn Crumpetsの7枚目のアルバム。彼らはパース発ではあるが、同郷のTame Impalaよりは、メルボルンのKing Gizzard & the Lizard Wizardに近しい、ハードロックやメタルも含む雑食的なサイケデリック・ロックである。そしてその雑食成分も、サイケ、プログレ、初期ハードロックやメタル、ジャズ、ソウル、オルタナティブ・ロックなど各種に及んでおり、それらを貪欲に飲み込み、ぐちゃぐちゃに混ぜ合わせて1曲に練り上げる驚異的な消化能力がバンドの強みだ。そしてアルバム単位においては、それぞれの作品で混入している成分は変わらない(つまりKing Gizzardのようにアルバムごとに音が激変するわけではない)ものの、サイケ味が強くなったり、ハードロック味やプログレ味が強くなったりと、アルバムに寄って少しずつ主要成分のバランスが異なっているのが特徴だ。
 そんな事情もあって、実は彼らについては全てのアルバム追っかけているわけではなく、割と好きになるアルバムとイマイチに感じるアルバムがくっきりわかれている。私は基本的にハードロックやメタルにあまり興味が無いので、彼らに関しても基本的に、サイケ・ジャズ・ソウル味が強く出ているアルバムのほうが好きで、過去作で言うと『High Visceral, Pt.2』が特に好きなのだが、本作はそれに次いでお気に入りのアルバムとなった。

 Psychedelic Porn Crumpetsの基調となっているのは70年代のプログレ、ハードロック、メタルをベースにしたパワフルで熱量の高いサウンドだが、ジャズ、ソウルの甘美で洒落た響きや、空間系のエフェクトを駆使したサイケデリックなサウンドは、それらの力強さにカウンターを当てて深い味わいを醸し出す効果を持っていて、本作でもその奥行きが実に効いている。メロディが美しい「As The Hummingbird Hovers」「Concrete & Cola」などの曲は特に素晴らしい。さらに今作では、「Qwik Maff」でクリーントーンの美しいギターアンサンブルを駆使したUSインディサウンドまでをも搭載しており、オシャレさやポップさまでも醸し出している。そして興味がないとはいえ、やはりアドレナリン・ミュージックとしては普通に楽しめるので冒頭いきなりフルスロットルになる「Another Reincarnation」のようなハードなリフは好きだし、プログレメタルのような混沌とした変拍子を決めまくる「March on for Pax Ramona」もいい(怪しげな言葉をまくしたてるスポークンワード気味のヴォーカルもカッコイイ)。このアップダウン、メリハリの強さが本作の良いところで、以前より楽曲の輪郭がくっきりとして分かりやすくなっており、リスナーの耳に届く精度が高まっている印象だ。後半少し地味かな?と感じる以外はかなり実の詰まったアルバムである。

 サイケにはどんよりとダウナーなタイプや奇天烈で怪しげなタイプも多く、私のような人間はそういうものが大好物だが、彼らは割とアッパーだし、00年以降のガレージロック・リヴァイヴァル的な感触もあるため聴きやすい部類で、特に本作は聴きやすさにおいては過去作一番であるように感じる。ちなみに本作のすぐ後にリリースされた2025年2枚目の8thアルバム『Pogo Rodeo』は見事に本作と違う雰囲気の、ハードロックやガレージロック成分の強いアルバムで、割と好きな曲もあるけれどレビューを書けるほどは聴き込めなさそうだ。

評価:★★★☆+ 7.5/10