
アルバム前半は、極めてまったりと始まっていく。かつてはCD屋の試聴機対策で、アルバム前半にアップテンポでキャッチーなシングル曲を入れるという手法があって今でもその作りは有効であるが、本作は1曲目と2曲目というツカミの部分でアルバム中最もスローテンポで静かなフォークソングを入れているという、大胆不敵なつくりである。それ以降の展開でカタルシスを生み出せるという自信が無いと出来ないことだが、実際、この後の展開が凄いのである。
Parcelsを彷彿とさせるソウル/ファンクポップ「Beleive U」や、跳ねるようなモータウンビートが高揚感を高めてくれる「Mistakes」で徐々にスピードを上げていくと、今度は牧歌的なフォークソングから始まりつつどんどん曲調が変わっていき最後は美しいハーモニーを聴かせる「Piccolo Amore」、都会的かつ近未来的なエレクトロサウンドがスペーシーな世界に発展する「Everything I Have」と、始まりと終わりでガラッと風景の変わる曲が立て続いて、地味な感じなのかな?と思わせる序盤からは嘘のように、鮮やかで変化に富む展開を迎える。
そしてそんな細かい分析的な見方がどうでもよくなるくらい、本作においては歌メロが素晴らし過ぎるのである。この後続く、メランコリックな歌謡曲的美メロ「Satellite」は日本人も胸をつかまれる人は多いだろうし、懐かしのTravisやKeaneを思わせる超絶泣きメロ「Bluebird」、この2曲はただただソングライティングとメロディセンスだけで引き込まれる曲で、こういう正攻法のソングライティングはもはややり尽くされている中、まだこんなふうにストレートにリスナーの心の琴線に触れることが出来るんだなあ、と、ただただ感動。最後キラキラなシンセが切ないシティポップ「Fading Out」で締めくくるのも素敵すぎるエンディングである。すばらしい傑作アルバムだと思う。