Herbie Hancock – Secrets(1976)

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 なんといってもまずはこの強烈な顔ジャケである。アフロでヒゲでメガネで裸のハービーがビーチでキメ顔をしている、このむせかえるような漢のセクシーさと自己主張のアピールにちょっと怯まされたが、実際のアルバムの内容はこのアートワークの印象とは少し異なるものであった。

 本作『Secrets』は、前作『Man-Child』で参加ミュージシャンが大幅に増えてサウンドも豪華になったのとは対照的に、共にアルバムを3枚制作したThe Headhuntersも含めていったん参加メンバーをリセットし、改めて少数精鋭に選抜しなおしたような形である。前作でもかなり個性を主張していたギターのワーワーワトソン、The Headhuntersからはベースのポール・ジャクソン、金管楽器系のマルチ奏者ベニー・モウピンを中心にしたメンバーで作り上げた作品は、前3作の延長線上にはあるものの、少しリラックスしたムードが目立ち、なおかつ全体的にファンクやフュージョンが垣根無く並んでいるようなバランスにまとまっている。またハービーも前作から引き続きリズムやエフェクトに徹しているプレイが多く、ソロプレイでバリバリに目立つよりも今でいうところのサウンドプロデューサー的な立ち位置というか、全体を統御する役目に重点を置いているような印象を受ける。
 特に、本作の序盤は完全にユルい雰囲気で、ここだけはアートワークのごときビーチのリゾート感が確かにある。マッタリしたファンク「Doin’It」、スペーシーなチルフュージョン「People Music」、ハービーの定番曲のノンキな海の家ver「Cantelope Island」と続くゆったりしたノリに、ああさすがに3作連続でバキバキのジャズファンクに集中するのは疲れちゃったのかな、と思わせるが、後半(B面)冒頭の「Spider」からは一転して、ファンキーなベースがぐいぐい引っ張るグルーヴと中盤からはクイーカのウホウホサウンドも飛び出すなどゴキゲンさが増してきて、徐々に速度も上がっていく。メジャーセブンスの洒落たコード感が生み出すスウィートなメロディがたまらない「Gentle Thoughts」を経由して、「Swamp Rat」の途中からはビーチを離れてジェット・コースターに乗せられた感じのグルーヴになり、最後の高速フュージョン「Sansho Shima」はロック好きのリスナーも大興奮、ハービーもようやく最後に主役のご登場と言わんばかりにピアノソロを弾きまくっていてこれがまたカッコいい。
 ちなみに「Sansho Shima」ってなんぞ? と思ったら、「三障四魔」という創価学会でよく使われる仏教用語で、学会員のハービーがこれの引用に及んだ模様。自分のような40代くらいの日本人は、創価学会というと「選挙になると突然親しくもない友人・知人から電話がかかってきて公明党への投票をアツくオススメされる」という学会員の気味の悪い選挙活動を忌み嫌っている人が多いゆえ、創価学会と言われるとなんかちょっと好意的な気持ちが減ってしまうかもしれないが、ハービーが創価学会に入信した70年代のアメリカはニューエイジ・ブームで、ミュージシャンなど意識高い系の人たちが東洋の宗教にハマりがちだった時代でもあるから、まあ時代だよねぇ、と思う。なんにせよこの曲めちゃくちゃカッコいいので、そんなことはとりあえず置いて楽しみたいところである。

 前作に引き続き、一般的には(つまりジャズファンからは)評価の芳しからぬアルバムのようであるが、前半の波のようにゆったりうねるリラックスしたグルーヴといい、後半の尻上がりにスピードが速まってテンションが張りつめていく熱量の高い展開といい、個人的にはどちらもなかなか楽しめるアルバムであった。
 
評価:★★★☆+ 7.5/10