Stealing Sheep – GLO(Girl Life Online)(2025)

新譜
新譜

 リヴァプールの女性3人組インディポップバンドStealing Sheepの5作目。フォーク調のサイケポップとしてデビューして以降は、徐々に音楽性がエレクトロ化していくキャリアを辿っており、前作『Wow Machine』で完全なエレクトロ・グループへと変化。今作でも引き続きエレクトロ路線だが、本作はそういった音楽的なこととは別に、Stealing Sheepにとっては転機となるアルバムのようである。
 これまで3枚アルバムをリリースしたHeavenly Recordsを離れ、前作をリリースしたあたりからDIY的な活動となり、よりコンセプチュアルかつアート的なパフォーマンスが目立つようになっていたが、本作のリリースに当たっては、女性主導の自主インディレーベル(※1)「G-IRL」を立ち上げ、音源のリリースに留まらず、アートパフォーマンスなど幅広い表現活動を行うことも視野に入れている模様。そんな経緯から、本作はいろいろな変化や野心がうかがえるような力作となっている。
 全体的に、前作の実験性から打って変わってよりポップな方面に舵を切っており、シンセポップやハウスを基調としつつ、ラッパーをフィーチャーしたヒップホップ的なアプローチや、ソリッドな輪郭を持った賑やかなビートとサウンド、そこに一番の強みである3人のヴォーカル・ハーモニーを載せていくスタイルとなっている。しょっぱな勢いをつける「Let’s Go!」は新しい幕開けを飾るにふさわしいアッパーな曲だし、イタロディスコっぽいレトロなシンセのベース音と生ドラムの絡みがグルーヴィーな「U F33L M3」は非常にダンサブルでカッコイイ。終盤を盛り上げるポップなタイトルトラック「GLO」は変化に富むトリッキーな曲展開、メンバー自身のラップっぽいヴォーカルを挟むなど集大成的な内容で、ハーモニーが美しい「Seein’ Stars」は大団円のアルバムの締めくくりである。

 ただ、聴き返していくうちに気になってくるのが、全体的に漂っているどんよりとした暗いムードである。早めのBPMの曲が多く、リズムのノリ自体は良いのだが、決意や覚悟の表れか、重苦しいシンセ・サウンドが覆いかぶさる「Found You」、これまた重たいビートが効いている「Take Me Back」などのダークな曲調や、「Just Do」のような憂鬱な雰囲気が持続するほのぐらい印象の曲が多く(この曲はこれまで何度もアレンジやミックスを変えてリリースされているので、メンバーにとっては思い入れの強い曲なのかもしれない)、これまでの作品にあった華やかさ、決して派手ではないがイヤーワーミーな中毒性のある淡いポップ感、お茶目で軽快なノリなどが、上記に挙げた曲以外では聴けなくなってしまっている。MVでは今まで同様メンバー3人が楽しそうに踊っているのだけれど、音源だけ聴いているとシリアスな切迫感が醸し出されていて、しかも、収録時間が長めなのもあり、少し冗長さも感じる次第だ。このあたり、もうちょっとコンパクトなつくりだったり、中盤あたりにカウンターで明るめの曲を入れたりしていれば、だいぶ印象が変わったかもしれない。

 音楽性を拡張するためのアグレッシブな試みや、彼女たちのYouTubeチャンネルで垣間見える一風変わったライブパフォーマンス、3人のヴォーカルを軸とした音作りなど、未だいろいろな可能性を秘めているバンドではあるが、今作で示された暗いトーンは、個人的に少しハマれなかった次第である。

※1 最近たまに見かける、音楽業界に女性アーティストは多いが、反面女性のエンジニア、プロデューサー、レーベル経営者などは非常に少ない、という問題意識からの行動であろうか。このあたりに女性的な視点が増えてくると、表現の幅も広がって面白くなりそうだと思うので、この自主レーベルの活動は非常に楽しみである。

評価:★★★ 6.0/10