【LIVE】Viagra Boys Infinite Anxiety : Japan(2026/1/27@Spotify O-EAST)

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Live雑記
 昨年コーチェラの配信で目撃して、直後にリリースされたアルバム『Viagr Aboys』を聴いてすっかりファンになり、過去作も総ざらいして臨んだViagra Boys初来日ライブ@渋谷O-EAST。海外バンドのライブを観に行くたび、洋楽リスナーがほんとに稀になってしまった現在の日本では、いったいどんな人たちが客として集まるのかが気になるところだが、やっぱり最近の傾向として日本にいる外国人ばっかりなんじゃないか、若い人がほとんどいなさそう、平日の19時開演じゃ集まりも悪そう、とかいろいろ心配しながら、様変わりしてしまった渋谷の交差点から道玄坂を歩く。私はちょうど00年ごろに渋谷によく出入りしていたので、なんだか今の渋谷が不思議な感じだ。当時の若者の街な感じ=コギャル、チーマー、サブカル系(外資系CD屋とかサブカル漫画屋とか洋服屋巡ったりする層で私はこの層)が入り乱れていた渋谷と、今の六本木と秋葉原と新宿の混合物のようになった渋谷は、なんかもう当初の役割を終えて個性が薄まった町になっている感じがして空しいなあと思ったりしつつ、Oグループのライブハウスが固まってあるあたりは相も変わらず猥雑なラブホ街である種安心する。

 会場に入ると、心配をよそに、というか、計算が外れたというか、開演30分前からすでにかなりの客入りで、ロッカーもバーカウンターも大混雑。客はやはり外国人が多いが、日本のリスナーは老若男女という感じでいろいろな年齢層が入っている印象。自分と同じような年齢の叔父様・叔母様層はきっと00年ごろの洋楽ライブで共に盛り上がっていた人たちなのかな、自分がライブハウスで活動していた時代も含めて、顔見知りがいるんじゃないかとか多動的にキョロキョロしていたが、まあそんな簡単に知り合いに出会うわけもなく、会場に流れるアシッドハウスで体を揺らしていたら時間通りに開演。すでに熱気がすごく、バンドの面々が登場し1曲目「Man Made of Meat」が始まると、4枚目のアルバムまで彼らを待ち焦がれた日本のファンの熱量がはじけるように、ワッとばかりに観客が前方に殺到、どうやら自分はモッシュピットに巻き込まれたようで、そりゃ昔はピットで暴れたりもしていたけど、今や運動不足のインドア叔父様、セバスチャンほどではないが腹も出ている、さらに何年か前のSquidの来日ライブでインフルをもらってしまった苦い経験も思い出し、このあと2月後半までいくつかライブに参戦する関係上、体調も万全を期したい。ということで、戦略的撤退、モッシュピットを抜け出し、ピットインを避けた人たちで固まっているところに収まり観戦することに。しかしここもなかなか窮屈なほど込み合っており、体も自由に動かせない。最近観に行ったライブはSquid、Slowdive、Black Midiだったので、さすがにここまで混みあってもいないし激しくも無かったので、そういや昔はいつもこんな感じで汗まみれのもみくちゃだったっけな、と久々な感じに懐かしさを覚えたりした。

 ライブはバンドよりも客側の熱狂がなかなかのもので、ダイブ者もちらほら現れるなど、これぞロックの、パンクのライブですよという感じで感無量だった。まあ曲がめちゃくちゃ激しいわけでも速いわけでもないし、客層も自分も含めた割といい歳の方も多いから、ガチのパンクバンドほど会場全体でダイブやモッシュが終始発生しているわけではないけれど、ドラムとベースの戦車のような強靭なグルーヴから生み出される破壊的なタテノリは体を動かさずにはいられないほど煽られるし、耳をつんざくギターノイズやサックスのスモーキーなサイケデリアやポップなシンセ音には意識をトばされる。そこにセバスチャンのアンチロックスター的パフォーマンスである。ビールを口に含み噴水のように吹き上げると、さんざん動画で見ていた、音に反応してクネクネ動く動物の人形みたいなあやしいおどりと、ビールが散乱しているステージに寝っ転がって嗚咽を上げるなどの酔っぱらいオヤジそのものの振る舞いに、感動と笑いに包まれる。それでもそれほど泥酔することもなく、割とカッチリとしたステージングを行っていたのは、初めての日本でのライブがどんな反応になるか気にしていたらしいセバスチャンの見た目に反する繊細な一面のあらわれかな、と可愛らしく思ったりする。アンコール含めて18曲もやったのかと思えなくらい、熱狂の中、あっという間に過ぎ去ったライブだった。

 セットリスト
 1.Man Made of Meat
 2.Slow Learner
 3.Waterboy
 4.Punk Rock Loser
 5.Uno II
 6.Therapy
 7.Ain’t No Thief
 8.Pyramid of Health
 9.Troglodyte
 10.Down In The Basement
 11.Cold Play(セトリ表では表記がColdplayになってて草)
 12.ADD
 13.Medicine For Horses
 14.Sports
 15.Reserch Chemicals
 En.1 Bog Body
 En.2 Return To Monke
 En.3 Worms

 セットリストは去年から続くThe Infinite Anxietyツアーの流れのようなので新作『Viagr Aboys』からが多いものの、わりと全キャリアからまんべんなく人気曲が入っていて、彼らのライブを初めて見る日本のファンとしては嬉しい選曲。ただその一方で、『Viagr Aboys』で1番好きな「You N33d Me」がセットリストから外れるという残念な側面も。とはいえ、ライナスのサイケデリックなファズギターでノイズまみれになる「Pyramid of Health」も聴けたし、他にも今回やらなかった聴きたい曲はたくさんあるので、また彼らが日本に来たら必ず観に行けばよい話。セバスチャンも、日本でもっとファンを増やしたい、と言っているようなので、これだけ客が入って盛り上がっていれば、また来てくれるはず。
 そんな期待感と同時に、そもそも、もし彼らが00年代のフジロックやサマソニに来ていたら日本でも大人気になっていたはずなのになあ、という思いもある。そこは、彼らがデビューして頭角を現した10年代後半が、日本の音楽リスナーにとっては洋楽離れが顕著になったうえ、コロナ禍まで重なっていた時期なので、ようやく今年に初来日となったのは色々とめぐり合わせが悪かったとしかいいようがない。自分は彼らの雑食ハイブリッドバンドなところ、特にサイケデリアやノイズ、強靭な反復グルーヴの部分に割と惹かれているのだが、ポストパンクやPOLYSICS大好きな妻はもっとハマってライブでもはしゃいでいたので、ライブにパフォーマンスのキモさや変態性、ギャグ感、それに加えてパンク的な暴発感を求める人は年齢問わずハマるはず。まあ今でも、1回フジかサマソニに出ればかなりファンが増えるとは思う。今回のプロモーターがクリマンなので来るならサマソニだろうか。円安ジャパンで他国と争奪戦になる夏の時期は呼ぶのが難しいのかもしれないし、アイドル&邦ロックフェスになりつつあるサマソニにあまり期待はできないけれど、こんな渋谷でたった1日では満足できないので、とにかくもっと日本に呼んで欲しい。

 Viagra Boys、ほんとめちゃくちゃ盛り上がったライブでした。

ドラムセットの脇に小道具のように置かれるサッポロビール群。