
というかGilgameshというより、このバンドの中心人物、キーボディストのAlan Gowen。彼のキラキラした万華鏡のような鍵盤サウンドに魅了されてしまって、彼が関わった作品を片っ端から聴いている次第である。
まずカンタベリー・シーンについて。
ジャンル名だけは知っていて、特にウェールズのサイケバンドGorky’s Zygotic MynciやSuper Furry Animalsにハマっていた時に、よくこの用語が連発されていて気にはなっていた。
ただその時は、初期のThe Soft MachineとかKevin Ayersの作品をちょろっと試聴したくらいで、深入りはしなかった。
カンタベリー・シーンは60~70年代にかけて、イングランド南東部のカンタベリーで発生した音楽シーンで、サイケ~フォーク~ジャズなどの要素が強いプログレ、といった感じのジャンル。その中でも、Alan Gowenが関わっているバンドはフュージョン色が強く、今回レビューするGilgameshはその中でもとりわけ幻想的な音世界を作り上げているバンドである。
基本的にはインストのバンドで、ロック色も弱めなのだが、1曲目「Darker Brighter」を聴けばわかるように、鍵盤とギターによるコロコロ・フニャフニャしたやわらかいサウンドが耳にたいへん心地よい。ジャズ特有のテンションコードや転調を多用する幻想的なコードワークもたまらない。フュージョン系の音楽は当時流行り過ぎて、80年代のものに至ってはCMや商業施設でかかるようになるなどダサイものも多いのだが、彼らは洒落ているし、何よりドリーミーなのがいい。『Another Fine Tune You’ve Got Me Into』(君が私を夢中にさせた、もう1つの素晴らしい曲)というアルバムタイトルも素敵である。
続く2曲目「Bobberty」も、複数のモチーフがいくつも繋がった10分を越えるプログレッシブな曲だが、サウンドは『Sunshower』のころの大貫妙子を彷彿とさせるソフトでお洒落なフュージョンで、特に終盤のキーボードとギターの掛け合いは、夜空を駆け抜ける流星のようで非常に美しい。
さらに「Underwater Song」などは、ただ単にジャズっぽい音楽というだけでは終わらず、クラシックな管楽器を用いたりして幻想的なムードを醸し出す。深い森の中で妖精が出て来そうな感じがすごく良い。こういう雰囲気がドリームポップ好きな私を引き付ける所以である。
アルバム全体としても、上品なムードながらも起伏に富んでおり、瞑想的なムードになったかと思えば、後半はスペーシーかつ煌びやかなシンセサウンドで盛り上げたりと、1曲1曲は長くても途中で一切退屈しない。「Play Time」の最後のシンセの早弾きとか、昔のゲームミュージック風でたまらないですよ。
地味ながらも非常に素晴らしい作品。