
Kokorokoはトランペットのシーラ・モーリス=グレイとパーカッションのオノメ・エッジワースを中心としたバンドで、メンバーは色々入れ変わっているようだが現在はトランペット、トロンボーン、キーボード、ギター、ベース、ドラム、パーカッションの7人編成で活動している模様。このメンバーから繰り出される生のグルーヴが魅力で、メインストリームでは打ち込みのデジタルサウンドが流行する中、やっぱり人力サウンドが生み出す揺らぎや雑味、そこから立ち上がる生き物のようなグルーヴが好きなので、Kokorokoのような生音で勝負するバンドには非常に期待をしている次第だ。
さて、本作『Tuff Times Never Last』は、タイトルの通りポジティブなエナジーが表現されたアルバムだが、そのメッセージを届けるためか、本作ではソウルやR&Bといった歌モノジャンルにチャレンジしており、曲の大半がヴォーカル曲になっている。ロンドンの都会感と西アフリカの南国ムードが合体している素晴らしいリード曲「Sweetie」を筆頭に、基本的にはメンバーが楽器演奏の合間に明快なフレーズを繰り返し歌っているような形が多いが、メロウな美メロが光る「Idea 5」や「Time and Time」などのアルバム中盤の曲では、LULU.、Azekel、Demaeといったロンドンで活躍するシンガーをメインヴォーカルに起用して本格的にソウル~R&Bを追求。その影響か、前作までにあった躍動感あふれるジャズ・ファンク的な部分は若干抑えられているものの、「Three Piece Suit」や「Just Can’t Wait」などでは、ファットなベースが牽引するファンキー・グルーヴもしっかりと聴かせてくれる。いずれにせよ、暖かな日差しを思わせる陽気なホーンセクション、揺り籠のように身体を包み込むダブのような重低音ベース、軽快なステップを踏むトロピカルなリズム、メロウでオシャレなキーボードとギターといった持ち前のサウンドと、新しく導入された歌の相性は抜群で、全体的に極上のムードで満たされている。
ドラマティックに盛り上げたり、高揚感を煽るエモーショナルな作りではないものの、たゆたうようなグルーヴと陽気でチルなバイブスが終始持続する心地よさは格別だ。マッタリしたいときには、とにかくこのアルバムをかけとけばとりあえずイイ雰囲気になるし、Tuff Timesなんて続かないぜ、と歌詞をかみしめながらジックリと聴くのもまた感動的である。なかなか呑気に過ごすことが出来ない不穏な時代、カラ元気ではなく人肌の優しさや力強さで元気づけてくれる良質な作品である。