ELAIZA – 失楽園(2021)

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 正直に言うと最初はただのファンで、しかもドラマや映画に興味が無い故に、写真集だけ持っていたりする意識の低いファンであった。慙愧に耐えません。歌が上手いというのは知っていたものの、まさか本気で音楽に取り組むようになるとは思っておらず、最初にシングルデビューするときも「ダサかったらどうしよう」と一抹の不安を抱えていた。しかし、80年代の哀愁歌謡曲を薄めたようなメロディ・ラインにダンサブルなビートを合わせたかなりハイセンスなポップソング「Close To You」を聴いて感動し、以降不安が期待に変わり、このデビューアルバムを心待ちにしていた次第である。そしてその期待を上回る、純粋に音楽リスナー向けに作られたような、ストイックなポップアルバムが完成していた。

 音楽性としては、ジャズ、ソウル、R&Bをブレンドしたシティポップ寄りなJ-POP。そこにELAIZAの抑制されたクールなVoが乗り、モデルや俳優が仕事の合間に片手間にやる音楽というレベルをはるかに超えた洗練されたポップスとして仕上がっている。このあたり、日本のトレンドに合わせてるというより、海外のトレンドに合わせているような感じだ。冒頭を飾るグルーヴィーな「AYAYAY」、最初sleepy.abかと思ったくらいメランコリックな美メロが妖しく撫でつける「etude」、チャイコフスキーの「金平糖の精の踊り」をモチーフに使って不思議の国のアリス的な世界を演出するSOIL&”PIMP”SESSIONSとのコラボ曲「夢街」、シンプルなバンド演奏が可愛らしさを演出するシティポップ「愛だの恋だの」と、クオリティの高いサウンドと琴線に触れる素晴らしい歌が詰まっていて、1曲だけオールドスタイルなロック調のプリティー・ウーマンのカバー曲が入っているのは大貫妙子とか竹内まりや等、シティポップ系の女性SSWのアルバムにありがちな感じでほほえましくもあるが、それを除いては、最後の壮大なスケールのバラード「惑星」まで、統一された“ELAIZAの世界”でまとめ上げられていて、驚きと感動でいっぱいである。

 日本の音楽シーン全体がアニメ・ドラマとのタイアップやグループアイドル商法など、経済合理性に基づいた商業主義的手法に傾斜していっている昨今、日本の音楽からは興味がどんどんなくなっていき寂しい思いをしていたところ、まさか本職のミュージシャンではない経歴を辿っている人から、こんな本格的な音楽が生まれるとは想像もしていなかった。まだまだ日本の音楽にも希望が持てると思った、傑作デビューアルバムである。(21.12.31更新 25.9.25大幅加筆修正)

評価:★★★★ 8/10