
非常に楽しみにしていた本作、全曲ゴキゲンなシティポップ全開で、期待を裏切らない。しかも海外のインディポップのトレンドもブレンドされた、絶妙に今な感じのサウンドに仕上がっているのはさすがである。これまで海外インディ的な要素を出していた作品はあまりなかったので、Wild Nothingとのコラボ「Like a First Kiss」はとても驚いたのだが、思い起こせば1stアルバムから微妙にサイケデリック・ロックの影響を匂わせていたし、Tame Impalaをプレイリスト的なものに入れていたのを見た気がするので、実はけっこう海外インディに精通していそうなトイさんであり、今作のWild Nothing、Los Retros、Juanpalitoschinosとのコラボも納得である。
何よりまずは「Like a First Kiss」がシングルとして良すぎる。イントロからいかにもWild Nothing、しかも『Nocturne』のころの霧雨に煙るようなメランコリーと切ない疾走感を併せ持つギターポップなのだが、一十三十一のヴォーカルが入ると今度はいつもの一十三十一のネオン煌めくシティポップへと変貌する、名コラボ曲である。さらに、クセの強いサイケデリックなラテン・ローファイ・レトロサウンドを繰り出すLos Retrosとの気怠いデュエット曲「Before You Go」や、メキシコのシティポッパーJuanpalitoschinosとの最高に泣きメロで最高にグルーヴィーなディスコソング「あなたとContigo」など、新鮮でワクワクさせられるような曲が並ぶ。それもそのはず、海外の面々を始めとして、作曲陣が今まで一十三十一作品でお馴染みだったメンツからガラッと変わっており、唯一「デジャブのブルー」が常連組のDorian作曲だが、軽快なビートと弾けるシンセサウンドに加え、珍しくスポークンワードというか昔ながらの日本語ラップというか、語りパートのある曲となっておりこちらも新鮮だ。
ちなみに本作は全7曲でミニアルバム的なボリューム感。この内容の充実ぶりからいって、せめてあと1曲加えてフルレングスとして聴きたかった感じではあるのだが、一方で公式には本作がミニアルバムであるという表記は見当たらず、最近はSpotifyなどの区分にも無いし、「ミニアルバム」という概念が消失しつつあるのかもしれない。そのあたりの5~7曲で30分未満の作品形態をどうとらえればよいのか、という葛藤もないではないが、まあそこら辺は、この作品の良さを前にすれば、どうでもよいことかもしれない。