Genevieve Artadi / Forever Forever(2023)

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Allmusicを見ていてふと目に留まったアートワーク。気になって何曲か試聴してみたところ、大変好みの音楽性だったので即購入してしまった。
変態エレクトロフュージョンポップユニットKnowerの活動で知られるGenevieve Artadi、そのソロ2作目となるアルバム『Forever Forever』。

音楽の全体的な印象は、ジャズをベースにしながらラテンミュージックやサイケポップ、オルタナインディロックを掛け合わせた、ありそうでなかった個性的な音。これまではエレクトロなサウンドスタイルをベースにしていたようなので、これが完成形というわけではなさそうだが、このオーソドックスなバンド編成のサウンドはシンプルに歌の良さや演奏のキレ味が伝わってきてメチャクチャハマってる気がする。

まず冒頭からキラッキラのドリーミーサイケデリックポップな先行シングル「Visionary」。ジャズ的なコード進行の転調に快感を感じてしまう体質なので、この曲の持つめくるめくコードワークとメロディにはたまらんものがある。こういったコードワークは単純に音としての快楽性もあるし、先の展開が読めないワクワク感もあって、伝統的なポップやロックのスケールの外側にある「まだ描かれていない音風景」を見るような思いがし、楽しくなる。加えて、ヴォーカルがソフトなのがサウンドプロダクションの面白さと噛み合わさって聴きやすい。曲の構成も6/8から4/4に拍子が変化したりと小技が効いていて、掴みどころのないフワフワした印象を強めることに成功している。これでも非常にポップに聴かせられるというのが驚きだ。
また西洋・東洋・南米、色々な要素の混ざった無国籍な音世界が万華鏡のように展開されているのも本作の特徴で、このアルバムのタイトルトラックともなっている「Forever Forever」では、トロピカルなブラジリアンジャズのようなメロディを聴くことが出来る。どこか『Milky Night』の頃のStereolabを彷彿とさせる印象。
「Black Shirts」では、トロピカルな美しいメロディとともにファンキーなグルーヴが炸裂しており、陶酔感・浮遊感がありながらも割と肉体的な熱量もある。スローテンポの曲も合間に入れながら、盟友Louis Coleのドラムが躍動するオルタナティブ・ロック+ジャズでめちゃくちゃカッコイイ「Plate」などもあり、アルバムの流れとしての緩急も抜群にイイ感じ。

私が音楽に求めているもの(非日常感・陶酔感・熱量)がたくさん詰まった、イヤな現実を素敵に忘れさせてくれる、2023年のAOTY入り必至な内容である。最近は彼女のようにジャズや、もしくはソウル・R&Bの素養を持つミュージシャンがインディロック的な手法を取り入れることが増えてきているが、この流れは非常に面白いのでもっと流行ってほしいと思う。

評価:★★★★☆ 9/10

彼女はMVもなかなか秀逸で、アイデア一発勝負で強い印象を残す内容。上記「Plate」のは、曲名と曲の持つ緊張感を「頭に“皿”を載せるかくし芸をワンカットで撮る」という意表を突いたアイデアと、衣装含めた画面の美術的な色彩の工夫と相まって、インパクトが絶大。
前述の「Visionary」のMVも、見事に曲の雰囲気とズレたレトロなLAメタル風の衣装とパフォーマンスが良い意味での違和感を生み、それがフックになっている。ただKnowerのMVはもっと強烈なんで、これでも大人しくしてるほうなのかもしれない。