Luna Li – When a Thought Grows Wings(2024)

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 2024年最大のチェック漏れである。Spotifyのオススメで流れるまで全く知らなかったのだが、あまりに好みの音楽性なので驚き、そしてすぐ夢中になってしまった。去年リアルタイムで聴けていたら間違いなく年間ベストトップ10に入れていたであろう、韓国系カナダ人ハンナ・キムのソロプロジェクトLuna Liの2ndアルバムである。

 とにかく2曲目「Fantasy」を聴いてみてほしいのだが、メロディとコーラスワークの美しさがヤバい域に達している。どれだけ人をうっとりさせれば気が済むのか。ネオソウル/オルタナティブR&Bやそれこそ70年代ソウルなどが持っている甘さとスムースさ、さらにメロウで温かみのあるグルーヴを持ちながら、仕上がりは極めてドリーミーという、ありそうでなかったサウンド。歌詞も素晴らしく、「Fantasy is keeping me alive(ファンタジーが私を生かしてくれる)」という私のような趣味の人間には共感しかないフレーズが心に染み渡る。ドリームポップの新たな名曲の誕生である。
 アルバムは朝の爽やかな光のようなシンセの音に導かる「Confusion Song」に始まり、ラテンジャズみのあるコーラスが暖かいメロウなソウル風ポップス「Minnie Says(Would You Be My)」、ビタースウィートなロマンスに満ち満ちた「Golden Hour」、The BeatlesとThe Flaming Lipsが合わさったような「I Imagine」と「Enigami」の連作など、「Fantasy」以外にも素晴らしい曲が畳みかけてくる。
 全体的にソウルやR&B、ジャズ的な要素を持つ曲が多い一方で、伝統的なフォーク、ポップスタイルの曲も散りばめられており、完全にブラックミュージックに寄っているわけではないブレンド具合が絶妙だ。ストリングスやフルート、ハープなどのクラシカルな楽器の幻想的な使い方なんかはThe Flaming LipsやMercury Revにも近しいものを感ずる。1stで色濃かったサイケデリック・ロック色は薄れているが、健全な音だけで構成されながらも陶酔感や浮遊感は抜群で、緑が広がる大自然の中をやわらかい光に包まれながら軽くなった身体でフワフワ漂っているような気持ちにさせられる。

 そしてアルバムアートワークも美意識が追及されていて素晴らしい。シロヒトリのように妖艶な純白と緋の衣装に、クールな表情で斧を担いで構える、というどこか日本の漫画の表紙にでもありそうなギャップの妙味が凝縮されたデザイン。こういうのは本当に好きなのである。

 強烈に耳を惹きつける磨き上げられたメロディライン、天にも昇るような美しいハーモニー、包み込むようなサウンドが織りなす至福の1枚。30分とやや短めな尺が惜しまれるほど、もっとこの世界に浸っていたいと思わせる傑作である。

評価:★★★★ 8/10