シングルレビュー2025年6月

新譜
新譜
 6月のシングル新曲はほとんどがリリースを控えているアルバムからのリードだったので、かなり気に入った曲以外はアルバムレビューの方に譲ることにした。音楽に費やせる時間の少なさと音楽供給量(保存量)の多さ、そしてそんな飽和した状況でさらに新譜に振り回されることのストレスをじわじわ感じながらも、それでも聴いちゃう音楽依存症患者の悲しい性が現れた今月のシングルレビューである。

Animal Collective / Love On the Big Screen


 Panda Bearのソロが割とハイファイな美メロアルバムだったからか、Animal Collective本体の新曲はアナログノイズの乗っかったAvey Tare色の強いザラザラしたローファイ・アシッド・ポップである。ソロも良いけど、やはり4人の個性が混ざり合ったバンドの混沌としたサウンドは至高だ。そして激サイケなMVは相変わらずバッドトリップしたようなキモさで笑ってしまう。

Kokoroko / Just Can’t Wait


 目前に迫ったアルバムリリースがまさに「Just Can’t Wait」なkokorokoのファンキー&ソウルフルな新曲。今年は6月にまで夏が浸出してきて、まだセミも鳴かないのにすでに8月末くらいのウンザリ感に包まれているが、kokorokoの陽気でBreezin’なサウンドを浴びることでなんとかしのぎ切りたい所存だ。

Mikayla Geier / Piano In The Sky


 シンガーソングライターなのか、パフォーマーなのか、インフルエンサーなのか、相変わらずこの人の活動実態がよく分からないのだが、映画作品的な投稿動画を見るとそれらを総合した活動をしているように思われるので、古典的なカテゴライズに当てはめるのは不粋かもしれない。去年のデビューアルバムに続くこの新曲も切れ味の鋭いポップソングで、60’sポップスと80’sディスコポップが合わさったような軽快さが魅惑的だ。

Deliverie / Love You Right


 以前も紹介したノルウェー(と思われる)の新人バンドDeliverieの新曲。53 Thievesとかにも近い感じもするが、ネオソウルやオルタナティブR&Bに欧州的なドリームポップやエレクトロミュージックなどのバックボーンが合わさって、より一層スムースかつ涼し気に展開していることろが面白い。このあたりのサウンドの塩梅は、ドリームポップ側からソウルに接近しているMen I TrustやTokyo Tea Roomといったバンドとも似ており、興味深く聴いている次第。

Elbow / Audio Vertigo Echo elbow ep5


 昨年の傑作アルバム『Audio Vertigo』から漏れた曲を集めた4曲入りEPだが、躍動感溢れるアルバムの曲たちと甲乙つけ難いクオリティの曲ばかりで、長いキャリアを築いてきたバンドとは思えない出涸らし感の無さは驚異的である。どの曲も衰えを知らないガイ・ガーヴェイのソングライティングとバンドの生々しい演奏が楽しめるが、特にブラックミュージックやクラブミュージックを通過している彼らの強固なグルーヴが強く出ているところが頼もしい限りだ。

Night Swimming / Whispers On Argyle


 各パートの繊細な息遣いが聴こえてくる極めて美しい新曲。マイナスイオン溢れるオーガニックなムードがたまらない。この夏の熱波を前に、清冽な小川の流れのごときNight Swimmingの音楽で存分に涼を取っていきたい。

Caroline Polachek / On The Beach


 最後はCaroline Polachek。この天にも昇るようなあまりに美しい新曲は、小島秀夫の新作ゲームのテーマソング。小島秀夫は海外のインディミュージックに造詣が深いようで自分と音楽の趣味が近いのだが、あいにくメタルギアを含め小島作品のゲームはまったくやったことがない。昔からごく一部のレトロゲームしかやらないし、現在ではもはやゲーム引退状態なので今後もプレイすることはないであろう。ただ、こういった国境を超えた視点を持って意識の高い作品を作ることは、意識の低い国内ユーザーに合わせて売上と反比例して中身を痩せ細らせていく日本のエンタメ業界にあっては極めて意義深いことで、数少ない良心的な日本人クリエイターということで今後も活躍して欲しいと思う次第。
 それはさておき、この曲のファルセットはいつにも増して鳥肌モノである。天性の声を持っているにも拘らず、そして同時にそういった人にありがちな寡作傾向であるため、今でも『Pang』や『Desire, I Want to Turn Into You』をちょくちょく聴きながら新作を心待ちにしている次第である。