
The Brian Jonestown MassacreやStereolabに影響を受けているらしいが、確かに曲調といいピチャピチャしたアシッドな電子音が飛び散る感じといい非常にエンペラー・トマト・ケチャップな感じのする1曲目「Time Goes Up」はいかにもStereolabフォロワーといった印象を抱かせる。しかしトリニティのヴォーカルが入ってくると一転、一介のインディバンドを逸脱した謎の生命体に聴こえてくるから不思議だ。そして2曲目「Hypersonic Super-Asterid」からはユニークなMandrake Handshakeワールドが徐々に濃くなっていく。ミニマルで直線的なリズムのリフレインがジワジワと高揚感を高めていくクラウトロック的な曲であるが、要所でしっかりドリーミーなコード進行が華を添えておりポップなスケール感をも備えている。メジャーセブンスの甘いギターの響きとスペーシーな浮遊感が優雅な「Charlie’s Comet」や、ラテンアフロな香りを漂わすサウンド上でトリニティの寂寥感を湛えたヴォーカルが心に響く「The Change and the Changin」や「Lorenzo’s Desk」も秀逸で、リスナーを心地よく酔わせてくれる。
前半の若干洒落たムードからは一転して、後半は呪術的なマントラとグルーヴがトグロをまく「Barranmode」を始めとしてサイケデリック・ロック色が強まっていく。ジリジリと煮え立つノイズギターの湯気の中に妖しく舞うフルートやサックスの音色が混沌とした狂熱を煽っていくと、最後はSpiritualizedを思わせるスペーシー・アンセムな表題曲「Earth-Sized Worlds」でアルバムアートワークのような涅槃の境地に達したのち、冒頭のイントロに再接続して円環構造を成し終了。個性的な音世界を、アルバム1枚の物語にしっかりまとめ上げている充実のクオリティである。
十分面白い音楽性だとは思う一方で、少し薄味というか、ここからもっとメロメロなポップにも、もっとエグみの効いたサイケにも、リズム要素を強めてグルーヴィーにも出来そうな印象もある。しかしそれは転じてこのバンドの潜在能力であり、まだもっとヤバイことが出来るんじゃないかという伸びしろと言える。これからがさらに楽しみな、幸先の良いデビューアルバムだ。