TOPS – Bury the Key(2025)

新譜
新譜

 地元モントリオールのレーベルを離れ、LucineやCom Truiseで私も馴染みがあるアメリカのミシガン拠点Ghostly Internationalからのリリースとなる5thアルバム。レーベルはテクノ系だし、一方でアートワークはメタルみたいだし、音楽性がガラッと変わってしまうのかと思いきや、傑作だった前作『I Feel Alive』からあまり路線は変わらず、80’sポップスをモダンで洗練されたインディポップに再構築した期待通りの内容。アートワークのイメージ通りなのは、ダークなムードのロック曲「Falling On My Sword」だけで、全体的に秋から冬が似合う切なく寂しげな80’sフレイバーのポップソングで敷き詰められている。

 前作はキャッチーなフックに満ちた充実の内容だったゆえ、本作の控えめなメロディは最初こそ落ち着いた印象や、アルバム通した流れが希薄な感じを受けたものの、繊細な囁き声と毅然とした強い地声を使い分けるジェーン・ペニーの魅力的なヴォーカルや、デヴィッド・キャリエールのリリカルなギター、曲に奥行きと華やかさを加えるマルタ・チコジェビッチのキーボードが耳に残って何度も聴いているうち、聴けば聴くほど味が出るタイプのアルバムであることに気付かされる。前作リリース以降にジェーンとマルタがソロアルバムをリリースし、それぞれバンド以上に深く80’sシンセポップを探究した成果もあるのか、瞬間的に耳を捉えるキャッチーさより、味わい深い余韻を聴かせるような成熟したサウンドになっている印象を受ける。
 またそれに加えて、本作は恋愛の負の面というか、何かが終わってしまった後の空虚さや喪失感、やりきれなさ、「知ってしまった」ことの寂しさや倦怠感などに焦点が当たっていて、恋愛の渦中の熱狂と混乱のようなソワソワしたムードを持っていた前作とは対象的だ。それでも前半は、ドリーミーなメロディにとろけるようなシンセが広がり、そこに切ない歌詞が乗る取り合わせにグッとくる「Stars Come After You」、トリッキーなバンドアンサンブルとともに恋愛のすれ違いをユーモラスに歌う先行シングル「ICU2」、ダンサブルなディスコポップ「Annihilation」とバンドの新たな音楽的チャレンジがメインで、雰囲気が濃くなってくるのは中盤以降。不倫の状況を皮肉に歌う「Falling On My Sword」、甘く苦い恋の思い出がフィードバックするようなイントロに導かれる「Call You Back」、アルバムタイトルを歌詞に含む作品の核となる「Mean Streak」、きらめくハープシコードの音に導かれて「あなた無しで生きる方法を教えて」と切なく歌うラスト「Paper House」と、透き通るような青空や、枯葉が散る街並みをぼんやりと眺めながら聴くのにぴったりな、余韻たっぷりの大人のポップソング集に仕上がっている。

 一方ポップスのアルバムとしては、どうしても後半に盛り上がり所が欲しくなってしまう面もあるのだが、スーッと最後まで駆け抜けていくところは前作同様なので、これはもはやTOPSの持ち味である。90年代以降のロックやポップでよく見られたような映画的なドラマ性は無い代わりに、私たちの日常にも良くなじみ、気が向いたときに気軽に何度も聴けるのは良い点だと思う。私も秋が深まってから、家でも外でもずいぶん聴いた。派手さは無いものの、滋味深い良作だと思う。

評価:★★★★ 8/10

前作もそうだったのだが、TOPSはバンドがシングルとしてピックアップしている曲よりも、アルバムの中の曲の方が好きになることが多いので、なかなか紹介の仕方に困る。そしてそのシングルも、洗練された音楽とは対照的に、80’s感を出したかったのは分かるのだがちょっと悪ノリっぽいMVになっていて(特に「ICU2」)、もうちょっと雰囲気のある映像にしても良かったのではと思う次第。