Melody’s Echo Chamber – Unclouded(2025)

新譜
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 フランス人ミュージシャン、メロディ・プロシェによるサイケポッププロジェクトMelody’s Echo Chamberの4thアルバムは、いつになくマーゴ・ガーヤンに接近したサンシャイン・ポップ風の作品となった。Tame Impala感満載なケヴィン・パーカープロデュースの1st『Melody’s Echo Chamber』や、甘美なメロディがThe AvalanchesやThe Beta Bandを思わすようなヒップホップ・サイケデリアの海に飲み込まれる2nd『Bon Voyage』はあまりピンとこなかったのだが、本作のそよ風のように爽やかなメロディにはすぐハマってしまった。『Bon Voyage』の1曲目「Cross My Heart」なんかを聴いても素晴らしいメロディセンスを持った人であることはよく分かっていたので、これくらい彼女の歌を大事に扱った作品が来るのを待っていたのである。

 Melody’s Echo ChamberはこれまでTame Impala、スウェーデンのサイケデリック・ロックバンドDungenらとコラボレーションする形でアルバムを作ってきたが、本作ではスウェーデンのサウンド・プロデューサー、スヴェン・ワンダーとの共同プロデュースとなった。60~70年代のR&B/ソウル、映画音楽的サウンドで定評のあるスヴェン・ワンダーの起用は大正解で、優雅なストリングスが彼女の歌にフローラルな魅力を加えていて、非常に心地よい空気感に満ち溢れている。

 決して派手ではないがジワジワと琴線をなでつけるような歌とコード感が染みる先行シングルの「In The Stars」「Daisy」、ドリーミーな美メロとほんのりサイケ味を感じさせるギターの歪みが気持ち良い「Flowers Turn Into Gold」「Childhood Dream」、神秘的なムードをたたえた「Memory’s Underground」「Broken Roses」、“古代の空を探し求めて/夜の果てを歩いて”という印象的なフレーズから始まるこのアルバムの核心のような「How To Leave Misery Behind」など、どの曲でも、奇妙なSEや唐突な場面転換に惑わされることなく彼女の美しい歌の世界をこころゆくまで堪能できる。普段は実験的でエグいサイケサウンドのほうが普段は好きなのだが、これだけ綺麗なメロディが書ける彼女の場合は、やっぱり歌を大事に聴きたいのだ。

 いっぽうで歌に比重を移した分、当然サイケデリアはかなり抑えめ。一番それっぽいのは「Eyes Closed」の60’sスタイルのサイケアレンジ程度。もう少しサイケ成分があっても良かったかも、とはチラっと思うものの、それもこの流れるようなメロディの数々が日常生活でふわっとイヤーワームしたりすると、いや、やっぱりこれくらいの風通しのよさが良い塩梅だよな、と思い返す。サイケデリアがアッサリしている分、朝イチで聴いても極上のさわやかさなのである。

 全体通して清々しいグッドメロディが収められた本作は、リフレインする示唆的な歌詞を含め、心を穏やかにしてくれる傑作。一日の始まりを告げるサウンドとして、まだしばらくはお世話になりそうである。

評価:★★★★ 8.0/10