
中身を見ていくと、ダウナーなシンセと気だるげなアコギ、美しいコーラスが幻想的なサイケデリアを醸している「Organon」による幕開けがまずすばらしく、80’sなシンセとギターアルペジオによる霧のように漂うノスタルジアが心地よい「Sugar」は、今までよりは控えめなものの唯一アップテンポでファンキーなベースが聴ける。ただ、本作はやはりそれよりも、続く「Sorbitol」の美メロとメランコリアのほうが聴きどころで、特に「Tree Among Shrubs」の、切なく物悲しい気持ちを掻き立てるメロディが本作中いちばんのお気に入り。「Serenade of Water」や「5Am Waltz」のようにほんのりトリップホップを思わす曲もあり、淡いトーンのなかにも耳を凝らすと様々な工夫や彩りがあって滋味深い。 ただ、全体としては少し淡く作り過ぎているような物足りない印象もあって、後半に行くに従い掴みどころのない展開となっていく。次作『Equus Asinus』では儚さやメランコリアにさらに深入りして逆に魅力を増し、そこから分離したノリの良い曲だけで構成した双子作『Equus Caballus』も爽快な出来だったので、両者のバランスを中庸に整えてバランスよく1枚におさめた本作は、今からすると過渡期の作品という印象を受ける次第だ。彼らの持ち味の一つでもあったグルーヴィな「Tailwhip」や「Lauren」のような曲が1曲でもあれば随分違う印象になった気がするが、とはいえ、プロデューサーグループのような感じだった初期からバンドらしい音楽性へ変化していく中で、いよいよ彼らの個性が固まった作品として重要だし、後のキャリアに引き継がれていく前半のメランコリアや欧州ロマン的(※)なムードを湛えた曲たちには今も変わらずうっとりさせられる。
ずっと注目して聴き続けているバンドなんで、今後もマイペースに続けてほしい。(22.01.19更新 25.11.25大幅加筆修正)
※彼らはカナダ出身なのでいちおうアメリカ大陸のバンドなのだが、どちらかというとヨーロッパの音楽に近いムードを多分に持っており、これはおそらくモントリオールの土地柄だと思うのだが、それでいて欧州の耽美系ほどドロドロしたものがなくさらっとした清涼感もあるのもMen I Trustの魅力だ。