World Brain – Open Source(2024)

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 アルバムアートワークからしていかにもジ・アザーサイドへのブレイクオンスルーを期待させてくれる、ベルリンの多国籍サイケポップバンドFensterのフランス人メンバーLucasのソロプロジェクトWorld Brainの2ndアルバム。サイケ・ドリームポップとレトロゲームの沼にハマったStereolab、といったような感じの特異なファンタジック・サイケポップが展開されている幻惑的な内容である。
 サウンドも気持ちよさの連続だ。Vinyl Williamsとの共通性も垣間見える、異世界的な転調が連続するとろけるようなメロディ。真綿のように柔らかく包み込む、タイムスリップ感を醸し出すレトロなシンセサウンド。快楽中枢を刺激される電子音のささやき。しかしボトムはほっこりと人肌感のあるソウル風味のグルーヴ。フルートやクラリネット、パーカッションなどのアコースティック楽器がブレンドされているのも絶妙で、シンセ指向サウンド特有のデジタル感にアナログのぬくもりが混じり合った音空間は胸中に得も言われぬノスタルジーを湧き起こす。正直トレンドを押さえたオシャレな音という感じはないのだが、それゆえにWorld Brain固有の世界観が濃厚に楽しめる音のアドベンチャー的感覚が楽しい。

 インストとヴォーカル曲が半々の構成だが、「Minute Papillon」や「Ville Fleurie」といった印象的な曲のヴォーカルはLucasの妹であるNoémie Chantreが仏語詞にて担当しており、ソフトな歌い口はさながらフレンチポップの様相で、これが本作の甘く切ない幻想性を匂い立たせるのに大きな役割を果たしている。一方、Lucas自身の歌による「Open」や、ヴォコーダーによる機械的なハーモニーが印象的な「hEARTSPACE」でのレトロなシンセサウンド、またトークボックスのようなヴォーカルエフェクトとマジカルな転調により別次元へ連れていかれそうになる「cAPTCHA」などでは、初期プレステや64といった90年代半ばの粗いポリゴン3Dの世界を思わせるデジタル・ノスタルジーな音風景を展開。さらに、アンビエントなシンセの光と花びらのように舞い散るフルートが対比される、デジタルな無機物と温かみのある有機物が混ざり合った異空間が心地よい「I Hope This Message Finds You」も秀逸。「Open」に始まり、昔のシンセのプリセット音源のような懐かしいサウンドとフルートの音色に伴われて幻想の彼岸へ飛び去るラスト「Source」まで巧妙に構築された夢見心地なアルバム構成も粋である。

 30分程度とコンパクトな作りのため、あっという間に終わってしまう物足りなさはあるものの、その分飽きさせる瞬間は皆無で、小気味良く楽しめるサイケポップの良作である。
評価:★★★☆+ 7.5/10